かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

乗数に単位を付けない?

海外の事例や,国内でも複写料金の計算式を見ていると,

  • 被乗数に単位を付け,乗数に単位を付けない

というルールにすれば,

  • 被乗数(単位あり)×乗数(単位なし)=積(被乗数と同じ単位)
  • 乗数(単位なし)×被乗数(単位あり)=積(被乗数と同じ単位)

となり,「被乗数と乗数の区別がつく」「かけ算の式の順序はどちらでもいい」と言えそうです.
とはいうものの,そのルールでは困るものが2種類あります.一つは,単位の変換です.インチからセンチメートルなどへの,長さの変換もありますが,本日は,通貨の変換(換算)を示すことにします.先月,円をユーロに両替したときの,受け取り(外貨両替計算書)です.

6万円分をユーロに替えたいと依頼すると,590ユーロになると言われました.1ユーロは手数料込みで101.42円だったので,かけ算すると59837.8.1円未満は切り捨てて,59,837円となりました.
式にすると,

  • 590×101.42=59837.8

で,これに単位を付けると

  • 590ユーロ×101.42=59837.8円

…ではありませんね.

  • 590[ユーロ]×101.42[円/ユーロ]=59837.8[円]

です.ちなみに,「単位の変換」を認識するきっかけとなった,Greerの文献では,

  • x [measure1] × y [measure2 per measure1] = xy [measure2]

という式で一般化されています.
もう一つは,乗数が百分率で書かれる場合です.これも事例を示しましょう.NTTの請求書です.

文字を書き出すと,

  • 基本使用量1,864円×50%,対象通話40円×100%

です.これらの「%」を,単純に取り除いて

  • 基本使用量1,864円×50,対象通話40円×100

とするわけにはいきません.パーセントを小数にして

  • 基本使用量1,864円×0.5

とするのは違和感がありますし,

  • 基本使用量1,864円×50/100,対象通話40円×100/100

だと文字数が増えます.分数式は,請求書を打ち出すときに好まれませんし….
思いつく限りの代替案と比較して,「基本使用量1,864円×50%」*1の形が,もっとも“座りがよい”と言ってよさそうです.

*1:ここの「×」は,「の」と読みたいところです.一方「対象通話40円×100%」の「×」は,割引されないこともあり,「は」です.