かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

シンガポール式算数ドリル

文章題を解く中心的な道具は「バーモデル」です.以下のところで,バーモデルを使った解き方の例が示されています.

テープ図に似ていますが,「1ユニット」でバーを積極的に分割している点が,特色となっています.
かけ算の式を見ていくと,そこには無頓着と思ってよさそうです.ある問題*1の解答の中に,「18枚×8ユニット=144枚」と「144枚×10セント=1440セント」がありました(p.54).


「GEP問題」の1問に,興味を覚えました.シンガポールの小学3年時に実施されるテストにGEPテストというのがあり,それに合格すれば,4年生から特別クラスで英才教育を受けられます.合格者数は,一次テスト・二次テストを通った成績上位500人のみとのこと(p.49, p.51).
興味を覚えた問題は:

問題4
2、3、4、5、6、7、8の合計7枚の数字カードがあります。
リトヴィックは、この中から2枚ずつ3回抜き取り、2枚のカードの合計が、
1回目は9、2回目が11、3回目が12となりました。
残った1枚のカードの数字はいくつですか?
(p.49)

次のページには,「と仮定した場合」「になる可能性はない」を2回ずつ含む,ずいぶんと論理的なプロセスで解答が書かれています.
しかし2枚ずつ抜き取ったら戻さないことに注意すれば,残った1枚のカード,そして各回で抜き取ったカードの組み合わせは,簡単に求められます.
残った1枚のカードは,(2+3+4+5+6+7+8)−(9+11+12)=5×7−32=35−32=3です.
答えとしては「3」でおしまいですが,念のため,各回の組み合わせも求めておきます.「2回目が11,3回目が12」に着目すると,2の数字カードはそれらに入らない*2ので,1回目に抜き取られます.9−2=7で,7も1回目です.
残りは4,5,6,8の4枚です.「3回目が12」となるためには,ここに8が必要です*3.12−8=4で,3回目のもう1枚は4.残った5と6は,5+6=11なので,「2回目が11」の条件を満たします.
整理すると,「1回目は2と7,2回目は5と6,3回目は4と8をそれぞれ抜き取っており,残った1枚のカードの数字は3」です.
本の解答は冗長に見えたけれど,よりエレガントだと思った方法を書き出してみると,それなりの字数が必要になりました….

*1:問題文は「リトヴィックは今年1年、貯金箱に10セント硬貨と20セント硬貨を貯金しました。貯金箱を開けてみると、10セント硬貨は20セント硬貨より54枚多く、20セント硬貨の数は10セント硬貨の8分の5でした。リトヴィックは1年間でいくら貯金しましたか?」(p.53).これは4年生向けの問題です.「〜の8分の5」とあるので,日本だと6年生向けになります.

*2:8までの数との和は,11にも(もちろん12にも)届きません.

*3:4,5,6からどのように2つを取り出しても,その合計は12に届きません.