かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

全国学力テストの算数ABに二次元表

 4月18日に全国学力・学習状況調査が実施され,調査問題や解説資料が公表されています。

 算数A・算数Bをざっと読みまして,その両方で,二次元の表が出題されているのに,驚きました。
 算数A大問9(最後の大問)は,家でイヌやネコを飼っているかどうかを聞き,出席番号・イヌ・ネコの3列からなる表にしています。次のページで,次の表に対し,2つの小問を与えています。

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 算数B大問4では,5年生のハンカチとティッシュペーパーを持ってきた人数に関して,一部数値が書かれている表があります。
 解説ではこれらの表は「二次元表」と表記しています。また平成21年度【小学校】算数A大問8で出題されているとあるので,アクセスしてみると,http://www.nier.go.jp/09chousa/09kaisetsu_shou_sansuu.pdf#page=44に表記されていました。この1つ前のページで問題文を読むことができ,聞いた人数も,飼っているかどうか(○×)も,今年のと同一でした。
 小学校学習指導要領解説算数編には「二次元表」の名称はありません。ただ,この種の表をつくることについては,第4学年D(数量関係)で記されていました。PDF版ではpp.160-161です。

(4) 目的に応じて資料を集めて分類整理し,表やグラフを用いて分かりやすく表したり,特徴を調べたりすることができるようにする。
ア 資料を二つの観点から分類整理して特徴を調べること。
イ (略)

(略)
 ア 二つの観点から分類整理すること
 第4学年では,資料を二つの観点から分類整理して表を用いて表すことができるようにする。
 資料を集めて分類整理するに当たって,目的に応じ,ある観点から起こり得る場合を分類して,項目を決めることが必要である。例えば,A,Bの二つの観点から資料を調べるとき,Aから見て資料は「性質aをもっている」と「性質aをもっていない」の場合が考えられ,またBから見て資料は「性質bをもっている」と「性質bをもっていない」の場合が考えられる。そのとき,これらを組み合わせると,資料についてA,B二つの観点から見て,四つの場合が考えられる。
 このように,二つの観点から,物事を分類整理したり,論理的に起こり得る場合を調べたり,落ちや重なりがないように考えたりすることが大切である。

 この表は,昨年,日本学術会議数理科学委員会数学教育分科会が出した「初等中等教育における算数・数学教育の改善についての提言」でも見かけました。http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t228-4.pdf#page=14に載っており,本文は「例えば,第1学年の「資料の活用」領域に,二次元表の行比率や列比率に関する学習14を位置づけることが考えられる。」で,14について,同じページに脚注が記されています。

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 この提言を受けて,全国学力テストでの二次元表を出題した,という推測もできます。とはいえ「二次元表」の用語は以前からあったわけですし,今年3月に告示された新しい学習指導要領には用語としては見当たらず,また「二次元表の行比率や列比率に関する学習」は小中いずれの指導要領にも,また今回の出題にも,見当たりませんでした。方向性はよく分からない,といったところです。
 他の出題で気になったこととして,最小公倍数を答える問題の解説で,倍数を小さい数から列挙する際に0が入っていないこと,仮の平均の解説で棒グラフの一部省略が使われていること,問題文の月のイメージについて,国立教育政策研究所公開のものは画像なし,毎日新聞https://mainichi.jp/scholartest2017/)では画像ありとなっていること,をあげておきます。