mのリボンがあります。mずつ切った場合と,mずつ切った場合とで,あまりが短いのはどちらでしょうか。
- 出版社/メーカー: 東洋館出版社
- 発売日: 2017/04/28
- メディア: 雑誌
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「新学習指導要領の徹底研究!」と題する,座談会形式の文章の中で,6年生の担任をしている盛山隆雄氏が授業で出したという問題です。問題文は座談会中のp.29にあり(上記は,求め方と答えが変わらない範囲で改変しています),写真入りの授業の状況が,pp.30-33の下部に記されています。
本文から離れて検討してみます。まずは整数に置き換えます。問題文に出てくる長さを,すべて5倍にすると,次のようになります。
13mのリボンがあります。3mずつ切った場合と,4mずつ切った場合とで,あまりが短いのはどちらでしょうか。
3年生でも求められる,あまりのあるわり算です。
- 3mずつ切った場合には,13÷3=4あまり1で,3mのリボンが4本できて,あまりは1mです。
- 4mずつ切った場合には,13÷4=3あまり1で,4mのリボンが3本できて,あまりは1mです。
- あまりの長さは「どちらも同じ」です。
「mのリボン…」も同じです。
- mずつ切った場合には,÷=4あまりで,mのリボンが4本できて,あまりはmです。
- mずつ切った場合には,÷=3あまりで,mのリボンが3本できて,あまりはmです。
- あまりの長さは「どちらも同じ」です。
ここで「÷=4あまり」という式は,自明ではありませんし,小学校の教科書に載っていることも,期待できません。
4年で学習する,被乗数,除数,商,余りの間の関係式,具体的には「(被除数)=(除数)×(商)+(余り)」*1にもとに,導出を試みます。はじめに整数からです。3mずつ切った場合の「13÷3=4あまり1」は,「13=3×4+1」と表せます。
両辺を5で割ると,「=×4+」となります*2。
そしてこの式を,「あまりのあるわり算」で解釈するなら,「÷=4あまり」となる,という次第です。
座談会に記載の授業では,以下の2つが板書されています.
- ÷=×== 4本とれてmあまる。
- ÷=×== 3本とれてmあまる。
板書写真では,これらの式の上で,「mずつ切った方があまりが短い!」が,大きな四角で囲まれています。座談会の中で盛山氏は,39人中22人がこのようにしたと話しています.
これに対して「同じじゃないの?」という子どもの発言を発端として,意見交換がなされます。
さまざまなとらえ方を通じて,前者の式の商の非整数部分であるは,長さそのものではなく,mずつ切った場合にその長さを1としたときの倍の長さ,すなわち×=mであり,これがあまりとなること,後者も同様に×=mがあまりであることを,学級で共有していました。
ミスコンセプション(誤概念, p.31)は,を「4本とれてmあまる」と解釈すること,より具体的には,非整数部分をあまりの長さとみなしてしまうところにありました。
子どもたちに誤解をさせよう,そしてその間違いに気づいてもらおう,というスタンスから離れるなら,今回の出題は,「あまりのあるわり算」は,分数どうしでも発生し得るのだと,読んで感じました。