かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

4a+3bの3例

 中学数学の指導する側のQ&A集です。質問部が網掛けになっているほか,図表や手書きノートが効果的に使われており,読みやすい構成となっています。
 「数と式」の問16は,「文字式の意味を具体的な事象と関連付けて読み取ることができない生徒がいます。どのように指導をすればよいですか。」とあります(p.27)。回答では,2段階の指導が提案されています。後半を書き出します(p.28)。

 文字式を提示して,それに関連する事象を考える場を設定する。例えば「4a+3b」を提示して,この式に関連する事象を考えるようにすると,次のような場合が挙げられる。

  • 1人a円*1の品物を4つ,1つb円の品物を3つ買ったときの代金の合計
  • 時速4kmでa時間,その後,時速3kmでb時間散歩したときの距離の合計
  • 1辺a cmの正方形と1辺b cmの正三角形のまわりの長さの合計

 このような活動と共に,それを確かめる活動を通して,文字式の意味を読み取る方法が身に付くと考えられる。

 箇条書きの3つの「合計」については,小学6年の算数でも,式にすることができます(文字を用いた式)。単位は別にして,代金の合計は,a×4+b×3と表せます。距離の合計は,4×a+3×bです。長さの合計は,4×a+3×bです。
 乗算記号の左が文字で右が定数,またその逆というのもありますが,これらは小学校の,「一つ分の数×いくつ分」に基づいているからです。
 その上で,中学数学の文字式のルールに従い,どの式も4a+3bと表すことになります。
 とはいえ「文字式の意味を具体的な事象と関連付けて読み取ること」を苦手とする生徒が,4a+3bの文字式から,この3つの例を思い浮かぶというのは,期待しにくいところです。これについて,授業でたくさん作らせるのはどうでしょうか。
 「4a+3bで表されるような場面を書きなさい。例:お菓子a個入りの袋が4つ,同じお菓子b個入りの袋が3つあるときの,お菓子の合計」と出題します。教師は紙を用意しておき、1枚に1つの答え(場面)を書いてもらいます。苦手な生徒は1つだけでもよく,得意な生徒は何パターンも書くことになるでしょう。時間を決めて回収し,集計することで,いろいろな場面が作れることを,クラスで共有できるのではないかと思いました。

*1:原文ママ。「1つa円」と思われます。