かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

3行4列のアレイと,かけ算の式について―3×4か,4×3か,両方か―

 はじめに,作成した図を:
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 『小学校学習指導要領解説算数編』(平成29年6月)のPDFファイル*1には,第2学年の数学的活動の中に,「ものの個数を数える際に,数のまとまりに関心をもつ活動~乗法との出合い~」という小見出しで,学習例が示されています(pp.126-127)。

ものの個数を数える際に,数のまとまりに関心をもつ活動~乗法との出合い~
 この活動は,「A数と計算」の(3)の指導における数学的活動であり,同数累加の簡潔な表現として,かけ算の式と出合う活動である。第1学年では,10のまとまりが幾つあるかを数えたり,2とびや5とびでものの数を数えたりするなどして,数のまとまりに着目する経験をしてきている。ここではこれらの経験を踏まえて,ものの数をまとまりとして捉えることで構成を再現しやすくなることに気付き,乗法的にみることへとつなげていくことをねらいとしている。
 例えば,映像を見て,そこに表されたものの数をブロックで並べる活動を行う。左のような映像を見て全部で幾つあるかを考える際,「同じ数ずつ」あることに気付くことができれば,それが幾つあるのか,まとまりの個数を数える必要性が生まれる。串が3本あること,団子が4個ずつ並んでいることを見いだせば,同じようにブロックで並べることができる。全部の数も,並べた後で数えることができる。
 この団子の数は,数えると12個である。式で表現すれば,4+4+4と表現できる。しかし,その式では3本と見いだした数を直接表現できていない。そのことを表すためにかけ算を使って4×3という式に表すことを知る。
 また,右のような場面では,「同じ数ずつ」縦横に並んでいることが共有できれば,何をみればよいかが焦点化できる。「縦は何段かな。」「横は何列あったかな。」などである。それらが分かれば,ブロックを並べることができる。縦に3段あること,横に4列あることが見いだせれば,3×4,又は4×3と式で表すことができる。答えは,3+3+3+3として求めることもできるし,並べたブロックを数えて求めることもできる。

 「映像」と「右のような場面」について,それぞれ写真があるのですが引用では省略しています。右のような場面というのは,壁の掲示物で,3段・4列に並んでいます。こちらについて,冒頭で示した画像の左列のように,「●」を用いて構成することができます。それを列ごとに見れば,1つの列に3個,それが4列あるという分け方ができ,このとき,式は4×3=12となります。また,段ごとに見れば,1つの段に4個,それが3列あるという分け方になり,式は3×4=12です。
 団子を含む映像のほうは,クォータービューによる団子のアレイと見ることもできますが,掲示物と異なる点があります。串にささっているのです。「串が3本あること,団子が4個ずつ並んでいることを見いだせば」,1つ分の数は4,いくつ分は3がそれぞれ対応し,式は4×3=12です。
 この団子の並びでは,3×4=12と式に表すことが期待されていません。これは冒頭の画像からいくつかを隠した(使用しないようにした),次の画像で説明ができます。
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 「1つ分の数は3,いくつ分は4」と認識したときに,そこから,囲い込みのないアレイや,「1つ分の数は4,いくつ分は3」の場面に移動することは,『小学校学習指導要領解説算数編』や,小学校算数の教科書・書籍・学習指導案などから読み取れる状況をもとにすると,期待されていないのです。
 本日の記事を作るきっかけとなったのは,以下の2つのツイートです。個人的には後者に賛同します。

 アレイについては,米国Core Standardsの数学のTable 2も見ておきたいところです。表中の"There are 3 rows of apples with 6 apples in each row. How many apples are there?"は,団子の映像と関連し,脚注の"A harder form is to use the terms rows and columns: The apples in the grocery window are in 3 rows and 6 columns. How many apples are in there?"は,掲示物の並びと同じ構成です。
 アレイという用語は,『小学校学習指導要領解説算数編』で使用されていませんが,中島健三が1968年の論説で紹介しています。遠山啓が1971年に書いた中に「「教室の机は1列に6つずつ4列ならんでいます.机はみんなでいくつありますか」という問題では,4×6でも,6×4でもいいとせざるをえないだろう」と述べていることや,ある問題集には「こしかけを ならべています。1れつに4こずつ 5れつ ならべると,ぜんぶでなんこになりますか」が絵入りで出題され正解は「4×5=20」のみであることなどにも,注意したいところです。