かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

『小学校新学習指導要領の展開』に見る,L字型アレイの5つの式

  • 齊藤一弥(編著): 平成29年版 小学校新学習指導要領の展開 算数編, 明治図書出版 (2017).

平成29年版 小学校新学習指導要領の展開 算数編

平成29年版 小学校新学習指導要領の展開 算数編

 第2学年の乗法の解説は,pp.49-52より読むことができます。はじめの段落には,「一つ分の大きさ×幾つ分」という言葉の式も見られます。
 読者を試しているように思えたのは,p.49に書かれた,●の数の求め方です。以下の並びが,枠で囲まれています。

●●●   
●●●   
●●●●●●
●●●●●●

 これに対して,同じページの最下段では,5人が異なる式を立てて,いずれも「18」を得ています。原文では,これも枠で囲まれ,5人の求め方は横並びとなっていますが,以下では箇条書きにしました。

  • Aさん 3×6=18
  • Bさん 6×3=18
  • Cさん 2×9=18
  • Dさん 4×3=12 2×3=6 12+6=18
  • Eさん 6×4=24 3×2=6 24-6=18

 順に見ていきます。まず,AさんとBさんの式は,かけられる数とかける数を反対にしただけにも見えますが,どちらも「一つ分の大きさ×幾つ分」に基づいています。Aさんは,●●●の並びを一つ分とし,それが6つあると判断したわけです。それに対しBさんは,2行3列の●の並びを一つ分と見ており,それが3つある,と読み取れます。またCさんについては,●を縦に2個並べたものが,一つ分となっています。
 Dさんは,左3列と右3列に分けて求め,最後にたし算をしています。左3列の●は4×3,右3列の●は2×3より求めています。
 Eさんは,ひき算です。右上の空白部分にも,同様に●があると考えると,4行6列の●の並びとなります.そこから,実際にはない,2行3列分の●を取り除くわけです。ここまで「a行b列」という書き方をしてきましたが,長方形の面積の公式では,行数のaは縦の長さ,列数のbは横の長さへと,発展していきます。
 となると式は,「4×6=24 2×3=6 24-6=18」とすべきではないか,はじめの2つのかけ算は,行数×列数で書くべきでないかと,考えることもできます。ですがEさんのかけ算の式は,行数×列数,もしくは「長いほうの数×短いほうの数」となっています。
 しかしアレイの総数を求める際には,a×bと書いてもb×aと書いてもよい,行数×列数でも列数×行数でも,縦×横でも横×縦でもよいと,クラスで共有しておけば,Eさんのような式が出ても受け入れられ,「『4×6=24』『2×3=6』にしないといけないじゃないの?」と質問する子どもはいないだろうと想像できます。
 DさんとEさんの間に,解答者を差し挟んで,「4×6=24 2×3=6 24-6=18」という式にすることを,この本で採用しなかったのは,一つは紙面の都合であり,もう一つは「4×6=24 2×3=6 24-6=18」と「6×4=24 3×2=6 24-6=18」とを並べることの必要性が乏しいためと考えられます。AさんとBさんの式の比較には,意味があるということでもあります。


 「みかんが皿に乗った絵」の件は,別記事にしました(1皿に5個ずつ入ったみかんの,9皿または4皿の個数)。