かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

誤った式に当てはまる問題を作る

 検索を通じて,見つけた文献ですが,広島県立教育センター研究報告平成29年度教員長期研修(前期) 各研修内容の順にたどることでも,得ることができます。平成29年6月15日から同月29日までの研究授業に多くの分量をとっています。そこに至るまでの検討において,「20年解説」と「29年解説」という表記で,現行および次期の小学校学習指導要領解説算数編を参照し,式の意味や,式の読み取りに関する算数的活動について言及しています。
 図3の直後に,他の文献を引用する形で,気になる記述がありました。

 片桐重男(2012)は,ある問題に対して誤った式を立てたとき,その誤った式に当てはまる問題を作ることによって,その誤りを明らかにすることができると述べている(8)。問題を解いて,正解か不正解かを伝えるだけではなく,図3の③④に示すように,問題作成者が正答について説明したり,誤答について何を間違えているのか,なぜ間違えたのかを両者が考えたりする活動を行う。この活動においても,式を問題場面と図と関連付けながら説明したり誤答について考えたりすることが大切である。

 原文で上付き文字になっていた「(8)」については,最終ページの【注】に,「(8) 片桐重男(2012):『算数教育学概論』東洋館出版p.24を参照されたい。」とありました。以下の書籍です。

 しかし指定のページには,関連しそうな表記を見つけることができませんでした。第7章(式)を読んでいくと,p.200に見つかりました。

§5. 式をよむことのよさと指導
(略)
 2) 式があるときに,その式が用いられる問題を作る場合
 これはいわゆる作問である。これによって,その式の使われ方が次第に一般化されていくというよさがある。また,ある問題に対して誤った式を立てたとき,その誤った式に当てはまる問題を作ることによって,その誤りを明らかにするといった場合にも用いられる。
 例えば,「4人におせんべいを3枚ずつあげたい。何枚いるか」に対して,問題の数値の出てくる順に式を書いて4×3とする子がいる。これに対して,逆に,「この式になる問題を作ろう」と作問させる。そうすると,この式をよんで「1人に4個ずつの飴をあげると3人では何個いるか」となる。これによってこの式が誤りであったことが分かる。(略)

 類例が思い浮かびます。




 ところで冒頭の文献では,「小数÷小数」についての研究授業を実施し,児童らにはプレテスト・ポストテストを解いてもらって分析をしています。図2の文章題は「1.2mで1.8kgの木の棒があります。この棒1mの重さは何kgですか。」で,式は1.8÷1.2とすることになり,「問題の数値の出てくる順」の1.2÷1.8や1.2×1.8は間違いです。
 図5より読むことのできるプレテスト・ポストテストも,逆順にしてわることになりますが,どれも逆順にすればよいわけではない,言い換えると問題場面に注意して式に表したり,式を読み取ったりすることが意図されているのは,図4(18kgの土をバケツで花だんから運動場まで運びます。このバケツ1回に運べる重さは3.2kgです。何回で全ての土を運動場まで運ぶことができますか。)*1から見ることができます。

*1:この図には「18÷3.2=5余り2」という式が書かれていますが,わり進めると18÷3.2=5.625となり,5回では残りがある(全ての土を運動場まで運んでいない),なので切り上げて答えは6回とする流れが思い浮かびました。とはいえ,18÷3.2を筆算で求めることによって,「5余り2」も得られるのですが。