かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

周りの長さ~算数授業研究より

  • 大野桂: 「活動」に問題解決の方略と数学的な見方・考え方が表出する, 算数授業研究, 東洋館出版社, Vol.121, pp.50-51 (2019).

 見開きの文章は,タイトル・小見出しを別にして「教科書6者全てに掲載されている,4年「ともなって変わる2つの量」の問題である。」から始まります。どんな問題なのかについては,以下をご覧ください。

 『小学校学習指導要領算数編』の該当箇所は,現在,http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/05/07/1387017_4_3.pdf#page=155より見ることができます。
 大野氏の解説では,当初は正方形の色板だったのが,途中から棒*1に置き換えています。そうすると,棒のスライドが可能となり,周りの長さ(棒の本数)が「段数×4」「4×段数」と表せることを確認しています。
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 「周りの長さ=段数×4」「周りの長さ=4×段数」となる,2つの式において,乗法の交換法則は直接的には使用していません。これについて,帰納的な考え・演繹的な考えが,背景にあるように思います。掲載された図としては(あるいは授業で),棒の数が変わらないよう形を変更するのは,段数が小さいものに限られますが,10段や100段ともなると,棒を配置することなく,同様の操作で,1辺が棒の10本分の正方形や,棒4本による正方形を100個,作ることができると考えます.棒1本の長さが1cmであれば,100段の場合の周りの長さは,100×4でも4×100でもよく,答えは100cmというわけです。
 ここまでは,この階段状の周りの長さという問題に特化した話です。「ともなって変わる2つの量」の学習を通じて期待される,数学的な見方・考え方は,以下の対応付けではないかと考えています。
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 表の上の段と下の段は,異なる種類の量であっても,それぞれの表のような対応関係が得られるのであれば,「△=□+3」「△=□×4」といった式で表すことができる,ということです。表の上と下には区別があり,上は「独立変数」,下は「従属変数」となります(それらの用語を小学校で教えるわけではありませんが)。「3」「4」は具体的な場面に応じて決まる定数であり,次期解説では三角形の数と周りの長さを「□+2=△」の等式で表しています。
 表づくりは,同種の2つの数量の関係にも,対応しています。啓林館と教育出版の,4年下の算数教科書を見ると,同じ長さの18本の棒を使う,18cmの紐をジオボードに引っかけるという方法で,長方形*2を作るときの,縦と横の長さを表にしています。縦の長さまたは本数を○,横の長さまたは本数を△として,「○+△=9」を得ます*3。教育出版のほうでは鶴亀算を表で解く方法*4も載せています。

*1:「マッチ棒パズル」の応用にも見えます。とはいえ算数の授業で,子どもたちが各自,それなりの本数のマッチ棒を持参して,配置したり並べ替えたりするのは,現実的ではありません。

*2:ジオボードの格子点の間隔を1cmとすると,正方形(1辺の長さは4.5cm)になることはありません。

*3:この場合,独立変数・従属変数といった区別をせず,「縦の長さと横の長さの和は9」となります。

*4:『算数再入門』isbn:9784121019424ではpp.177-179に「小学校4年生の解き方(表で解く)」を取り上げています。