かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

令和2年度算数教科書読み比べ(3)~みのまわりから

 教育出版・東京書籍・啓林館の算数教科書で,イラストではなく写真をもとに,かけ算の式で表すことが期待されているページがありました。
 教育出版『小学算数』2下ではp.9です。「みのまわりから,かけ算の式であらわせるものを見つけましょう。」の下に,4つの写真があります。傘立てについては,「かさ立てのあなの数は,4こずつ9れつ分です。」という文と,「4×9=36」の式も,書かれていましたが,他は写真のみです。くつ入れは,4つずつの6段と見れば,4×6の式が思いつきますが,ここは6×4でも良さそうに見えました。
 東京書籍『新しい算数』2下はp.12です。「学校の 中で かけ算の しきに 書ける ばめんを さがしましょう。」となっていて,写真は,「つくえ」「お面」「掲示物」「ロッカー」です。ぱっとみて思い浮かぶ式は,順に,「2×6」「5×8」「5×3」「3×7と7×3」です。
 啓林館『わくわく算数』2下だとp.9です。「みの まわりから,かけ算の しきで かける ものを みつけましょう。」の文と,写真は4つです。木のキューブを1個ずつ,少しだけずらして3段に積み重ねたものが,最初に目を引きました。面の数を求めるなら,6×3=18で18面となります。他には,4枚の花びらの花が3つ,5個を刺した串団子が3本。キューブもそうですが,式はありません。ロッカーの写真には,「たてに6この8つ分だから,6×8=48になります。」*1が添えられていました。
 写真(実物)から,1つ分の数といくつ分を見つけて,かけ算の式に表すことも,その中には2次元のアレイでモデル化でき,かけられる数とかける数を反対に書いた式が認められるものも含まれていることがあるというのも,現行の教科書で目にしていましたが,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』で事例が掲載されたのをもとに,対象の見直しや刷新が図られたように思います。
 『解説』の事例は現在,http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_004.pdf#page=134で見ることができます。串団子のかけ算の式は「4×3」です。一方,掲示物のかけ算の式は「3×4,又は4×3」となっています。
 多数の写真を用意して,かけ算の式(a×bかb×aか,両方か)について,片っぽしかダメというのと,両方イケるよというのを,クラスの子どもたちに答えてもらい,集計して表に取りまとめれば,かけ算の意味だけでなく,データの活用の学習にもなりそうです。

*1:「何個のいくつ分」という言葉は,啓林館の特色と理解しています。「6×8=48」という式を,文の中に入れて書くのを,小学2年の段階で取り入れているのも興味深いです。