かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

新旧の小学校学習指導要領解説算数編から,「能率」の出現箇所を求める

 新旧の『小学校学習指導要領解説算数編』のPDFファイルを対象に,「能率」の語が,前後にどのような表現を伴って出現するかを,取り出してみました。KWIC (keyword in context)形式にしています。
 現行の解説(平成20年)はhttp://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/よりダウンロードできます。以下の2つのファイルをダウンロードしてから,Adobe Acrobat Reader DCで開いて検索し,出現箇所と前後5文字,出現ページ番号を記載しました。行末に「*」を付けたものは,(解説ではない)小学校学習指導要領の記載を意味します。

,正確性, 能率 性,発展性 (p.24)
き,計算を 能率 的にするた (p.85)
計算などに 能率 よく用いる (p.165)
べるとより 能率 的に比べら (p.180)
的に応じて 能率 よくできる (p.196)
を用いると 能率 よく問題を (p.209)
断したり, 能率 的な処理の (p.218)*
断したり, 能率 的な処理の (p.219)

 新しい解説(平成29年)は,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1387014.htmよりダウンロードできます。以下のファイルを参照し,抽出の方法は上と同じです。

,的確かつ 能率 的に用いる (p.24)
,正確性, 能率 性,発展性 (p.28)
,的確かつ 能率 的に行った (p.29)
その総数を 能率 的に求める (p.49)
と,計算を 能率 的にするこ (p.113)
と,計算を 能率 的にするこ (p.141)
して問題を 能率 的に解決で (p.149)
とで,より 能率 的に処理で (p.185)
,効率的・ 能率 的な求め方 (p.209)
学習などに 能率 よく用いる (p.237)
同な図形を 能率 的にかくこ (p.249)
べるとより 能率 的に比べら (p.265)
的に応じて 能率 よくできる (p.295)
を用いると 能率 よく問題を (p.303)
の場面で, 能率 のよい処理 (pp.303-304)
り,思考を 能率 的に進める (p.332)
確に,より 能率 的に行うこ (p.332)
断したり, 能率 的な処理の (p.333)*
断したり, 能率 的な処理の (p.333)
断したり, 能率 的な処理の (p.370)*

 出現回数は,現行は8回,次期は20回です.現行の記載は,次期にもほぼそのまま記載されている*1ほか,新しい解説にはp.249の「合同な図形を能率的にかくことができるようにする」のように,図形の領域にも,「能率」を取り入れていることがわかります。
 前後を見ると,新旧いずれにも「より」が「能率的に」の前についているものもありますが,ない文でも,「より」を補って考え,他のどのような方法よりも能率的なのかを比較することの必要性が含まれているように思います。実際に行われた授業について,5つの考えを黒板に書き,ツッコミをしながら展開する事例を,1列に5台ずつ並べると~余りの大きさで分類する授業 - かけ算の順序の昔話で紹介してきました*2


 本記事と同じように出現箇所の調査をしたのは,1年半前のことです。

 「能率的」に関して,当ブログの1年前の記事と,メインブログの本日の記事より,抜粋します。

 『小学校学習指導要領(平成29年度告示)解説算数編』を読み直したところ,(略)「12÷3の計算が3の段の乗法九九を用いて能率的に求めることができる。このようなことを考えることができるようにすることがねらいとなる。」が入っています。この記述は,現行と一つ前の解説には見当たりません*3。
*3:「能率的」という語に関しては,現行および次期の(解説のつかない)小学校学習指導要領の算数で,各学年の目標および内容のあと,「指導内容の作成と内容の取扱い」の中に,出現します。解説のPDFファイルで機械的に検索すると,次期のほうが「能率的」の出現回数が多くなっています。

あまりのあるわり算で,九九のどの段を使えば能率的に求めることができるか

 上記の「能率的」は,「累減(12-3=9,9-3=6,6-3=3,3-3=0)」や「乗数固定(1×3≠12,2×3≠12,3×3≠12,4×3=12)」と比較して,より少ない手間で商が求められる*1ことと,将来的にあまりのあるわり算にも,適用できる*2ことを含んでいます.
*1:『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数』や,教科書では,被乗数固定,より正確に言うと,除数の九九の段を用いています.12÷4=□または□×3=12を満たす□は,「さんいちが3,さんにが6,さざんが9,さんし12!」で求められます.参照する九九の段が1つだけであるため,「いちさんが3,にさんが6,さざんが9,しさん12!」と,乗数固定で九九の段を切り替えていく手続きよりも,効率的と言えます.
*2:「12÷4の答えは,九九の表から見つかるじゃないか」という考え方に対しては,「27÷7」を,3の段を用いて求めるわけにいかないとなります.(略)

一部を隠すことができる九九の表 - わさっきhb

*1:現行のp.165の出現が,次期のp.237と少し異なっています。該当箇所を段落ごと取り出すと,「第5学年では,整数と小数がともに十進位取り記数法によって表されているという観点に立って,十進数としての特徴をまとめて理解できるようにし,それを計算などに能率よく用いることができるようにすることをねらいとしている。」と「第5学年では,整数と小数がともに十進位取り記数法によって表されているという観点に立って,十進数としての特徴をまとめて理解できるようにし,そのよさに気付き,学習したことを生活や学習などに能率よく用いる態度を養う。」でした。

*2:算数の授業としては,かけ算やひき算(累減)を考えとして出しながらも,最終的には,「33÷5=6あまり3」といった,あまりのあるわり算の式で表すことが,結論となっています.数学や情報処理(やプログラミング教育)まで考慮するなら,「33≡3 (mod 5)」「33 % 5 == 3」のように,商は不要で余りだけを求めるという演算が関連してきます。