かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

条件過多の問題

 算数の文章題などにおいて,答えを求めるのに不要な情報を意図的に入れているものがあります。「条件過多」「情報過多」「過剰条件」と呼ばれるほか,英語にも"infoglut"という単語があります。
 この記事では,条件過多の出題事例について,情報源を挙げながら紹介していきます。大部分がかけ算の文章題ですが,そうでないのもあります。いくつかについて当ブログ・メインブログの記事にリンクしています。

2019年:平成31年全国学力・学習状況調査

(2) 次に,はるとさんたちは,観覧車に乗るために列に並んでいます。
 観覧車のゴンドラは36台で,ゴンドラ1台に1組ずつ乗ります。ゴンドラは1台来るのに20秒かかります。
 今の先頭はあかりさんたちです。はるとさんは,あかりさんたちの10組後ろにいます。
 あかりさんたちがゴンドラに乗ってから,はるとさんが何秒後にゴンドラに乗ることができるのかを考えます。
 はるとさんがゴンドラに乗ることができるのは何秒後かを求める式を書きましょう。
ただし,計算の答えを書く必要はありません。

3.学習指導に当たって
 多くの情報から必要な数量を選択し,数学的に表現することができるようにする
○ 日常生活の問題の解決のために,多くの情報の中から必要な数量を見いだし,数学的に表現することができるようにすることが重要である。
 指導に当たっては,例えば,本設問を用いて,はるとさんがゴンドラに乗ることができるのは何秒後かという問題を解決するために必要な数量を選択し,立式する活動が考えられる。その際,問題場面の数量を解釈するために,「36や20,10は何を表していますか。」などと問いかけ,問題を解決するために必要な数量を選択することができるようにすることが大切である。

2014年:知識・技能の活用を図る算数科学習の工夫改善

 6個のオレンジをしぼると①70mL,②90mL,③85mL,④65mL,⑤75mL,⑥95mLしぼれ,平均は80mLになりました。このオレンジを20個しぼると何mL作れることになりますか。

○ 知識・技能の定着を図る学習場面において,条件不足や条件過多の問題や理由を問う問題を設定し,活用を意識させる。

2010年:東京書籍 新しい算数 教科書内容見本

f:id:takehikoMultiply:20191127055546j:plain

 1本136円で,280mL入りのジュースを4本買います。
 代金はいくらですか。

Point!
条件過多の問題など,
本文内では扱いにくい
問題も取り上げています。

  • "If the multiplication is identified, then we do not need the distinction between a multiplicand and a multiplier." --- The identification is much harder than you think because the choice of operation is a well-known issue in math education. Even limited to the multiplication, the way of recognition like that would disable children to choose two factors accurately in an infoglut situation, say "You are going to buy 4 bottles. Each bottle contains 280mL of juice and costs you 136 JPY (Japanese yen). How much do you have to pay?"

2008年:教育評価

情報過多問題
牡鹿には角が2本ある.大人になるとその角に枝角が6本生える.牡鹿の角の大きさは5フィートである.さて,大人の牡鹿の枝角は何本か.
情報不足問題
象の背の高さは13フィートである.象は,毎日,干し草やフルーツや野菜を130ポンド食べる.象は3日間で干し草を何ポンド食べるのか.

教育評価 (岩波テキストブックス)

教育評価 (岩波テキストブックス)

(出題例なし)2008年:教科書の改善・充実に関する研究報告書(算数)

3 提言
 これらを受けて、改善の方向としては以下の4点が挙げられる。

  • 練習問題の与え方としては、各教科書ともア)やウ)などの従来の形式的なものしか用意されていない。イ)やエ)などの工夫した問題の与え方を考慮する必要がある。
  • 特に、情報を自ら選択して問題の解決に当たることが、これから望まれることを考えると、文章だけの、いわゆる文章題だけでない問題の与え方を工夫する必要がある。
  • 単純に数値を組み合わせるだけでなく、過剰条件や条件不足、また条件を自ら変えてみるなどの問題も検討し、工夫して取り入れていくことも必要である。
  • 3項の計算練習問題を、適宜取り入れていく必要がある。