かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

×2でない~板書シリーズのオペレータ

 入手して読みました。
 さて,小数のかけ算の最初の授業(1/8, pp.58-59)に少し驚きを覚えました。1mのリボンが80円のとき,2.1mのリボンはいくらでしょうという問題で,テープ図に添えられている,乗法的オペレータが,「2.1倍」となっているのです。
 次のページの二重数直線では,「÷10」が丸囲みされています。式どうしの関係で「×10」が出現するのはp.63,二重数直線に「×4.2」が含まれているのはp.64です。
 ここで算数に見られる「オペレータ」について,確認しておきます。啓林館の算数用語集では,次の2件で解説されています。

 「6増える」「4減る」を「+6」や「-4」のように表します(そのように表すことを,2年で教えるわけではありませんし,中学で習う正負の数とも異なります)。「12+6-4」と式に表したときの「+6」「-4」を,「働きかけをするもの」そしてオペレータと解釈しよう,というわけです。
 かけ算・わり算も同様で,「6倍」は「×6」,「4で割る」は「÷4」と表せます。
 こういったオペレータの形を,どの学年のどんな単元で教えるとよいかというと,候補になるは4年の「変わり方」です。実際,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』においても,段数と周りの長さの関係の中で「矢印などを用いると「+4」や「×4」の関係が捉えやすい。」という記述があり,これは過去の解説には見当たりません。
 冒頭の本に戻ります.もちろん「2.1倍」と「×2.1」は,同じ操作(オペレータ)なので「どちらでもいい」と言えるのですが,何か違いがあるのかと思いながら,小数のかけ算よりも前の単元を見ていくと,変わり方の2/4(p.51)の板書に,関連しそうな内容がありました。

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 この板書イラストで,見ておきたいのは2つあります。一つは,画像の右側です。あめの数と代金,三角形の高さと面積の,2つの表に対し,それぞれの上段では「×2」「×3」が添えられているのに対し,下段は「2倍」「3倍」です。表のすぐ上には,比例の関係にある2量について「一方の量が2倍,3倍…になったとき,もう一方の量も2倍,3倍…となる関係。」と書かれていますが,表の表記に基づくなら「一方の量が×2,×3…になったとき,もう一方の量も2倍,3倍…となる関係。」と言いたくなります。説明変数と目的変数との間に違いがあるかのようです。
 もう一つ,興味深かったのは,画像では左下にある,「正方形の数が 1→2のとき」「ストローの本数 4→7」と「おかしの個数 1→2」「全体に重さ 160→230」の4つの「→」に添えられた関係で,順に「2倍」「2倍でない」「2倍」「2倍でない」とあります。「2倍」を「×2」に置き換えることはできても,「2倍でない」を,同様にオペレータ表記にするのは困難です。あえて書くなら,「×2」を書いてから,横長の(板書なら色を替えて)バツ印でしょうか。