かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

×10,×10,そして100でわる

 「啓林館の令和2年度以降用小学校教科書「わくわく算数」に掲載している「みんなで考える問題」(四角の問題)を解説した無料の動画コンテンツ」とのことです。各学年の内容を見ると,上巻のみと思われ,2年に「かけ算」はありません(上下巻に分かれていない6年でも,例えば「円の面積」が見当たりません)。
 5年生の「P40 1」でリンクされている動画を,通して見ました。

 「小数×小数の計算のしかたを考えよう。」が,めあてとして上段に書かれています。左上に提示されている出題は「1Lのすなの重さをはかったら,1.8kgでした。このすな0.3Lの重さは何kgですか。」で,二重数直線や,関係図とともに最初から表示されています。関係図では,1Lから0.3Lになるのを,0.3倍と捉え,砂の重さも同じように0.3倍となることから,求めたい重さは,「1.8×0.3」という式で表される,と導いています。
 次にこの計算の仕方へと移ります。筆算して小数点を…というのは未習ですし,実際のところ,この学習の求め方を理解した上で,筆算の方法を学ぶことになります。
 動画では2:44ごろに出現する,「かいとさんの考え」の,初期状態はこうです。

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 式を書く欄として,上段に「1.8×0.3=□」が,下段に「□×□=_」があり,左辺の2つの因数と右辺には,下向き矢印と「×_」が記載されています。さらに右には,U字型で下から上への矢印と,赤の箱です。
 かいとさんの「18×3の計算をもとに考えました。」の吹き出しのとおり,下段は「18×3=54」と計算します。そして左から見ていくと,1.8を18にするのは,10倍ですので「×10」,0.3を3にするのも,10倍ですので「×10」です。
 倍の合成により,54は,求めたい18×0.3の100倍ということで,「×100」です。「□の100倍は54」を逆に考えると,「54を100でわったら□」*1です。
 動画では,赤の箱の中の,赤色の手書きが,興味深い動きを示しました。「100」と書いてから,その左に「÷」を記しています。

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 これは音声(5:34から)の「そう,この,100,で,はい,わります」を反映した操作となっています。書かれたものだけを見れば「÷100」ですが,「÷」から書かなくてもよいというわけです。
 ここで,「÷」を書くスペースを空けて,「100」を書いていることを,見過ごすわけにもいきません。もし,赤の箱の左端に「100」を書いてしまうと,「÷」が書きにくくなります。
 手書きの妙といえば,以前にアメリカの事例を取り上げていました。

わり算の式も,「実演」を物語っていました.第3問で[6:13]ごろですが,赤ペンで「÷」,そしてその左に「6」を書いています.右から左への矢印なので,その流れということなのでしょう.「6÷」と書かれていても,「6わる」ではなく「わる6」を表しているのです.

二重数直線~2012年アメリカ,1980年日本

*1:動画では「1.8と0.3の両方を10倍すると18×3で,その積の\frac{1}{100}だから」のうちの\frac{1}{100}を手書きしています。