かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

世界算数のサンプル問題〜5本のチェーン

ざっと見ていきまして,「無料で参加」の文字がオレンジになっているところで,マウスのホイールが止まりました.プラン説明のページによると,順位やイラスト付きの解説,詳細な分析を知るには,2,400円/アカウントのスタンダードプランに申し込んでほしいとのこと.
トップページに戻って,茂木健一郎桜井進が出てくるのは,「かけ算の順序」に関心を持つ者として興味深いところでした*1
さて,識者コメントの少し上には,サンプル問題があります.01から05まで,全5問です.
最初に表示されている「ぬいぐるみのおもさ」は,直感的には2つで軽いほうにあるネコを選べばよさそうだし,代数的にはそれぞれの重さを文字に置いて,方程式と不等式を立てて処理していくんだよなあと思いながら,「解説をみる」をクリックすると,対象者(U9)向けに視覚化されていて*2,しかも最終的な重さの関係は束(lattice)だよなあ*3と,数学へのつながりをも感じさせてくれます.
かけ算の式は,サンプル問題03の解説の中にありました.出題内容を文字で表すと:i個(i=2,3,4,5,6)のリングが鎖状につながったチェーンがあります.それらをつないで,1つの大きな輪を作ります.1つのリングを開くのに10円,閉じる(つなぐ)のに20円かかります.輪を作るための最小額はいくらでしょう.
解説では,どのチェーンも一方の端を開いて閉じるという,単純な方法では,「30円×5=150円」,だけれど4個のリングからなるチェーンを1個ずつ開いて,他のチェーンをつなぐのに使えば,「30円×4=120円」となる*4,よって答えは120円としています.
かけ算の式は上に書いたとおりで,それらが画期的というわけではありません*5.各サンプル問題のエッセンスを,自分なりに書いてみると,全順序でない順序関係(サンプル問題01.以下「サンプル問題」を省略),縦横に並べて検討(02),最小性の保証(03),柱体でも錐体でもない空間図形(04),分割(05)となります.主催者の想定している算数・数学とは何なのかが,少しは見えてくるような出題でした.

*1:桜井の著書『オトナのための算数・数学やりなおしドリル』には,「2×3と3×2は同じ答えですが、考え方が違います。3組のカップルが映画館へ行ったとき「ペアシートが3席」と「3人用シートが2席ある」のでは違いますね。かける数、かけられる数の関係には、ちゃんと意味があるのです。」という解説が入っています(p.14).

*2:ただし,小学校の算数ではおそらく学習しない,「A=BおよびC>DならばA+C>B+D」という性質を使っています.

*3:出題の条件から,4つのぬいぐるみの重さの関係をすべて確定する(重さに関する全順序集合を決定する)ことはできないけれども,最も軽いのと最も重いのは特定できるわけです.

*4:これがコスト最小となるのは,どうやら読者に委ねられています.4つのチェーンを,任意個のリングでつないで,大きな輪を作るには,リングでつなぐのが4箇所必要となるから,といったところでしょうか.

*5:見たところ,式を答える問題はなさそうですし.