かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

2017/09/09に公開の動画

 https://twitter.com/MathmathSci/status/906421868151824385が,現在,@MathmathSciさんの固定されたツイートとなっています。
 10分たらずの動画を,勝手ながら要約すると,「5個ずつ3皿のりんごの個数を求めるとき,算数では5×3=15とするが,トランプ配りやアレイを使えば,3×5=15でもよいのではないか」といったところでしょうか。*1
 似た趣旨の文章が,一松信『数の世界』*2のpp.37-38に見られます。別の論拠を挙げ,トランプ配りを用いることで正解になり得るという記述は,『授業に役立つ算数教科書の数学的背景』*3のpp.9-10より読むことができます。
 この種の問題を扱った,以前の動画で,把握しているのは,次の2つです.それぞれのページによると,順に「2015年10月19日 22:10 投稿」「2011/12/29 に公開」とのことです。

 動画から離れると,今年公開された『小学校学習指導要領解説算数編』にも,トランプ配りが取り入れられています。http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/07/25/1387017_4_2.pdf#page=39です。「1皿に5個ずつ入ったみかんの4皿分の個数」について,5+5+5+5のほか,「各々の皿から1個ずつ数えると,1回の操作で4個数えることができ,全てのみかんを数えるために5回の操作が必要であることから,4+4+4+4+4という表現も可能ではある。」と書かれています。しかしながら,この場面を表すかけ算の式は「5×4」のみで,「4×5」は出てきません。次のページの「ここで述べた被乗数と乗数の順序は,「一つ分の大きさの幾つ分かに当たる大きさを求める」という日常生活などの問題の場面を式で表現する場合に大切にすべきことである」や「被乗数と乗数の順序に関する約束が必要であることやそのよさを児童に気付かせたい」もまた,「かけ算の順序はどちらでもいい」という考えと,両立しそうにありません。
 冒頭の動画については,「赤いりんごが,おさらの上に,5つ乗っています.そのさらが,3つあります.りんごはぜんぶで何個ありますか?」という問題に,「3×5」という式を立てた---クラスの2年生の子でも,動画のえくぼさんでも---とき,「それだと,3つずつのりんごが5さらになるよ」と言う子どもを想定していないのが,残念なところです。授業例(書籍の紹介)についてはhttp://takexikom.hatenadiary.jp/entry/2017/04/14/070422http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130219/1361220251#2に,より広範囲の情報源に基づく取りまとめとしてかけ算の順序論争についてわり算,包含除・等分除,トランプ配りに,リンクしておきます。

*1:2018年3月29日追記:ツイートをいただきました。「掛け算の順序を逆に書いた子に対して、それをバツにはできない」とのことです。https://twitter.com/MathmathSci/status/979112182959849472

*2:isbn:9784621088920

*3:isbn:9784491029641