かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

算数授業研究最新刊に見る,かけ算の順序,包含除・等分除,トランプ配り

  • 森本隆史: 等分除のイメージをもたせる難しさ, 算数授業研究, 東洋館出版社, Vol.117, pp.16-17 (2018).

算数授業研究 Vol.117 文章題の指導

算数授業研究 Vol.117 文章題の指導

 「◆」から始まる3つの小見出し(の文章)のうち,最初の「◆等分除の方がイメージを持ちにくい理由」は,個人的に収集してきた情報とおおむね,合致していました。書かれているのをいくつか抜き出すと,「等分除の方がイメージを持ちにくい」「包含除の方が操作がしやすい」「(包含除は)累減を使って,答えを出せばよい」「等分除は包含除と比べて操作がはっきりしない」のところです。またp.16右カラムでは,「4×□=24」と「□×4=24」を対比させ,前者は包含除で,「「4の段」の九九のまま問題場面をイメージすることができる」のに対し,後者は等分除で「「4の段」の意味とはならない」としています。
 個人的に収集してきた情報は,わり算,包含除・等分除,トランプ配り (2016.05) - わさっきになります。等分除操作の多様性については,そこで[山名2002]と書いた,http://ci.nii.ac.jp/naid/110001898376の文献が関連します。
 「◆等分除の文章題からの導入」は,以下を黒板に書くことから始まります。

あめが□こあります。4人であめを分けます。1人何こもらえるでしょうか。

 子どもたちの考えを箇条書きにして箱で囲み,p.17に移って,授業風景のモノクロ写真のあと,□を12にした場合,20にした場合で,教師そして子どもたちによる,「かけ算の順序」への対応が見られます。書き出します。

 この場面で実際に袋の中にいくつのあめが入っているのかを伝えずに4人の子どもにあめを1つずつ配っていった。袋の中にはあめが12こ入っていたので,1人3こずつのあめを手にした。ここで「かけ算で書くとどんな式になるの?」と問いかけると,「4×3」という式が出てきた。ここではあえて何も言わないようにした。
 今度は袋に20このあめを入れて同じように4人に配って見せた。どんなかけ算になるのかを問うと「4×5」という式が出てきた。「4×5って,何がいくつ分あるの?」と問いかけたところで,「あれ? おかしい」というつぶやきが聞こえ始める。「4×5だったら5人で分けることになるよ。だから,4×5じゃなくて5×4だと思う」「だったら,さっきのも4×3じゃなくて3×4だよ」ここで,式の書き方や記号の書き順など,わり算について教えていった。

 □に具体的な数を入れ,場面と式とを対応づけると,こうなります。

  • 「あめが12こあります。4人であめを分けます。1人何こもらえるでしょうか。」について,かけ算の式では4×3=12と表した。
  • 「あめが20こあります。4人であめを分けます。1人何こもらえるでしょうか。」について,かけ算の式を4×5=20と表したところで,「何がいくつ分あるの?」の発問に対して,おかしいと気づき,5×4=20がよいと変わった。
  • 先ほどの「あめが12こあります。4人であめを分けます。1人何こもらえるでしょうか。」についても,かけ算の式を3×4に変えた。

 トランプ配りでは,“1回に配る数×配る回数”によって,“1人分の個数×人数”とは,かけられる数・かける数が逆になる,という話は,「◆「見たこと」からわり算の問題文をつくる」の終わりのほうにも見られます。「24このあめを4人の1つずつ順番に配り,1人6こずつのあめがもらえる場面」について,「かけ算の式を書かせると,4×6=24となった」は,“1回に配る数×配る回数”と,「しかし,6×4でないとおかしいという意見が出て」は“1人分の個数×人数”と,それぞれ対応します。
 “1回に配る数×配る回数”を含む算数授業の例としては,2011年,New Education Expoの公開授業(http://blogos.com/article/8517/)があります。「4×1個を3回やるってことだから,ア。」という,生徒の反応のところです。この公開授業をされたのは,筑波大学附属小学校中博史先生でした。


 今回見てきたページから,1つ前の見開きは,「かけ算の計算について考える文章題」となっています。しかしざっと目を通したところ,小数をかける文章題だとか意味だとかで,5年の内容です。
 「かけ算の順序」は,そこからさらに2つめくって,p.10に載っていました。「あめが7こずつはいったふくろが5ふくろあります。」に対し,子どもたちは「7×5」が大多数,「5×7」が数名という反応です。両方の式と図を一人一人に書かせるとともに,板書(の写真)から7×5が,その場面に合った式としています。