かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

十字型アレイ

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 上の図形において,青丸の数は,20個あります。1個1個,数えていくことで,確認できます。
 20個となるのを,式で表すのであれば,2×2=4個の並びを「1つ分」とみなして,それが5つあるので,4×5=20個とするのが,まず思いつきます。
 別の考え方,そして立式もできます。以下のように赤で塗りつぶした5個を,「1つ分」とします。
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 この「1つ分」の形状は,90度ずつ回転させることで他に3箇所,得ることができ,過不足はありません。そこで式を5×4=20とし,「答え20個」も正解となります。
 この配置を,「十字型アレイ」と呼ぶことにします。丸を移動させることで,4行5列または5行4列のアレイ(長方形的配列)を作ることもできます。十字型としては,以下のような丸の並びも考えることはできますが,得られる式のバリエーションは豊富ではなく,合計20個の,冒頭の図が,算数において活用されてきたように思います。
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 今朝見つけたのは,次のページです。

 ページ全体の所感を書いておきます。算数の指導例・板書例として,非常に分かりやすいと感じました。しかしながら,どのあたりが「構造的」なのかは読み取れませんでした*1。「樋口万太郎先生(京都教育大学附属桃山小学校教諭)」の著書を先日,購入した*2のですが,本文にも著者プロフィールにも,「構造的」は見当たりませんでした。
 このページには2つの「算数の構造的板書」の画像があります。その2番目,「いちごの数は何個でしょうか。」の問題は,十字型アレイです。いちごということで,赤丸を使用されていますが,本記事では,令和2年度算数教科書読み比べ(6)~L字型アレイと同じ大きさの青丸で表現しました。
 いちごの数を求める板書のイラストでは,「式から考え方を考えよう」として,4種類の囲み方と式を取り上げています。5×4という式も,4×5という式も,見られますが,黄色の四角で囲った1つ分の数と,四角の数(いくつ分)が異なっており,「にているけどちがう」という縦書きもあります。
 同じ形状で,5×4も4×5も認めているのを,今年,東京書籍の教科書紹介のページで見かけました。https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou/sansu/introduction/page02.htmlの「▼3年上p.2~3」の件です。5を「1つ分」とする取り方は,同じです(本記事の赤の取り方とは違っています)。
 十字型アレイは,『誰もができる子どもに活用力をつけるワクワク授業づくり―第2回RISE授業実践セミナーの報告』のpp.101-102や,平成15年の学習指導案*3でも,見ることができます*4。『誰もができる~』の該当箇所は,正木孝昌氏のまとめ講演です。著作者一覧Excelファイルを確認すると,前述の樋口氏も,正木氏も,学校図書の編集者に名前が入っていました。
 学校図書の2~3年の算数教科書に,十字型アレイが載っているかどうかは,調べ切れていませんが,特定の先生や教科書会社に固有のネタではなく,●の並びに対してさまざまな式を作ることができるという点で,よく知られた問題と思われます。

*1:isbn:9784491019376isbn:9784180047208に載っている板書例と比べて,「構造的」もしくは「本質的」「画期的」と思える要素を,見出せなかったのでした。

*2:isbn:9784313653733

*3:http://www.saitama-city.ed.jp/03siryo/sidouan/e/e_sansu/0150302302%E3%81%8B%E3%81%91%E7%AE%97%EF%BC%88%EF%BC%92.pdf#page=9

*4:これらは,メインブログのhttps://takehikom.hateblo.jp/entry/20111017/1318783204で取り上げています。今年1月のブログ移行で,●の配置が崩れてしまっており,本日,画像に置き換えました。