かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

二重数直線の右端は矢印?

Q: 数直線の右端は「→」にしないといけないのでしょうか?

 そんなことありません。「→」でなかったので×や△(不正解・減点)というのは,聞いたことがありません。
 むしろ主流は,右端は「―」の形状です。算数の教科書,『小学校学習指導要領解説算数編』,全国学力テストの解説,小学校が公開している系統表のいずれも,そのようになっています。
 そこで,二重数直線で解くの2021年9月15日版では,右端(PowerPointでは終点矢印の種類)を「-」に変更しました。
 違いが分かるよう,2つのスライドを並べておきます。

  • 2021年8月15日版

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  • 2021年9月15日版

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 なのですが,右端を「→」としている数直線は,手書きのものを中心によく見かけます。例えば東京都算数教育研究会による令和2年度 研究委員会研究紀要のp.13に,以下の画像があります。数直線の右端の形状は「→」で,その右に「(ひき)」「(㎡)」が書かれています*1

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 これまで見てきた中で,「→」になっていたものを紹介します。

  • [根本2021, p.49]

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  • Using Double Number Line Diagrams

*2

  • [白井1997, p.53]

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 値が大きくなる方向を「→」とする(小さくなる方向は「―」)のは,2次元平面や3次元空間を図示するときにも使われます。例えば,画像の座標系 - 【ゆるゆるプログラミング】から,画像座標系と数学座標系の違いを知ることができます。また一次元・二次元・三次元・四次元・五次元の違い - 社会人の教科書では,タイトルのすぐ下(アイキャッチ画像)は「→」の形状ですが,本文中の図は矢印になっていません。

  • [根本2021] 根本和昭: "組立単位と概念形成: 数の計算と量の計算", 理科教室, 本の泉社, Vol.64, No.9, pp.48-53 (2021). [isbn:9784780715651]
  • [白井1997] 白井一之ほか8名: 乗法・除法の演算決定に有効にはたらく数直線の指導. 日本数学教育学会誌, Vol.79, No.6, pp.51-56 (1997). https://doi.org/10.32296/jjsme.79.6_51

*1:次のページの右上の画像も,「→」が使われています。

*2:https://www.youtube.com/watch?v=89VhAPhvNcA&t=187sより数秒間,表示される,2つの二重数直線を見ると,上はPC作成か出版物の投影,下は手書きですが,いずれも右端が矢印です。