かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

二三と三二,答えは同じでも,使いどころが違う

 全国算数授業研究会月報(算数授業通信)は,令和4年11月に3つ,発行されています。そのうちの真ん中,288号に,「かけ算の順序」を含む授業事例が,報告されていました.

 報告者は岩手県一関市立山目小学校の横沢大氏です。3年生のかけ算の学習で,23×3を筆算で計算します。
 「2. どうして下から計算するのかな」の本文から発言を2つ,画像の板書から1つを,取り出します.

「でも、教科書を見ると、『二三が6』じゃなくて、『三二が6』になってるよ。」

「たし算やひき算の筆算の時は、上の数から下の数を計算したけど、かけ算の筆算では、下の数から上の数を計算するのが不思議。」

2のだんと3のだんの2つを使うよりも,3のだんだけ使ってできる

 この件,メインブログ(わさっきhb;当時は別のブログ名とURLでしたが)で10年前に記事にしていました。

 実践報告の最後の画像のように,筆算で下から上に向かって矢印を設けるのは,昭和50年代の出版物にも,あったのでした。
 また別の学習内容と,比較を試みます。

 28÷8を求める際に,九九の中から,因数として8を持ち,かつ積が28以下となる,かけ算の式を,8の段以外で探すとなった場合には,3の段の「3×8=24」だけでは不十分であり,その前後の段を見て,それらが不適であることを確認する必要があります。2の段の「2×8=16」では,あまり(28-16=12)がわる数以上となり,4の段の「4×8=32」では,割られる数の28を超えてしまうのを,把握することが,「探索」のプロセスに含まれます。
 このように考えると,「28÷8は,何のだんの九九を使ってもとめればよいですか。」と問いを立てたとき,その答えとして「3のだん」は,許容できるように思えません。

 23×3の部分積20×3については,「二三が6」でも「三二が6」でも,求められますが,乗数の桁数が増えた場合にも,九九は「『(筆算の部分積を求めるにあたっての)乗数』の段」のみを適用すればよく,そのほうがより効率的に計算ができるわけです。九九1回適用の除法計算も,48÷6を求めるなど一つの式だけであれば,「八六」でも「六八」でも可能だと主張できるけれども,あまりの有無を含めさまざまな場合で効率良く計算できることを目指す中で,九九の「わる数の段」を使用すればよいと,理解すればいいのです。
 かけ算の筆算も,わり算も,3年で学習します。「二三と三二,答えは同じ(2年で学ぶ)でも,使いどころが違う(3年で学ぶ)」といったところでしょうか。