かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

かけ算の順序が教育上良い,というエビデンスを求める人のために

2014年11月下旬のやりとり:

2014年12月上旬のやりとり:

表現は悪いが新手の「粘着さん」です.かけ算の順序論争に関して一面的な認識でツイートしており,その認識を改めようとしても徒労に終わりそう,でもあります.
とはいえ「エビデンス」を持ち出しているのは,こちらサイドなので,ご本人に伝わるかどうかはさておき,もう少し丁寧に書いてほうがよいとも感じました.


エビデンスを言う際,押さえておくべきことがあります.

  • 算数教育において,ある指導法が教育的に良いという統計的な結果により,「国」レベルの教育内容が設定されたという事例は見当たらない.

日本だと学習指導要領(の変革)を見ていけば,確認がしやすいと思います.ある指導法が教育的に良いという話は,1950年代,九九のどの段から順に学習すればよいかというのが,報告されています.また統計的な結果はなさそうだけれども,ある指導法の提案が教科書に採用されていくという事例を,算数ものづくりで見てきています.
それらを踏まえ,「エビデンス」に対して何を期待すればよいかについては,以前に書いた記事の結語を転載します.

エビデンスがあるのは,それに基づく教育・指導をするための必要条件にも十分条件にもならないと思うのが良さそうです.とはいえ,ある指導法を支えるものにはなるでしょう.限界には注意をしつつ,より良い学びとは何なのだろうという問題意識を常に持って,エビデンスを見ていかなければならないように思います.

エビデンスに基づいた「かけ算の順序」研究


それはそれとして,「かけ算の順序が教育上良いというエビデンス」を追求するのなら,「かけ算の順序なしが教育上良いというエビデンス」や,「かけ算の順序が教育上良い」「かけ算の順序なしが教育上良い」が書かれた文献の調査も,あっていいように思うのですが,収集・整理はコストも手間もかかり,誰にでもできるものではありませんね.
「かけ算の順序が教育上良いというエビデンス」を繰り返し尋ねることで,そのエビデンスがないことを印象づけたいのは,十分に承知できますが,かえって,より広範な,国内外の算数・数学教育の状況に対し,当該ツイート主さんは見て見ぬ振りをする姿が,浮かび上がってくるようにも思っています.
なお,「かけ算の順序なしが教育上良い」には否定的な文章をかけ算には本来,順序がないで集約してきました.「かけ算の順序が教育上良い」については,http://ci.nii.ac.jp/naid/110007994852の学会解説がもっとも明快です.