かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

算数障害(プランニング過程)のチェック文章題

 算数障害に配慮した問題集を,グレーゾーンの子どもに対応した,かけ算の出題 - わさっきhbにて紹介していますが,本の購入は,このとき以来となります。Kindle版を読み終えました。
 今回の本は,問題集ではなく,算数障害の子どものタイプとして「数処理が苦手」「小さい数の計算が苦手」「計算の手続きが苦手」「空間の認知が苦手」「序数性が理解できない」「基数性が理解できない」「統合過程が苦手」「プランニング過程が苦手」の8種類を挙げ,それぞれの子どもの様子や,解説・指導法を提示しています。
 そのタイプ分けに先立ち,どれに該当するのかを知るためのチェックリストが,就学前と1年生以降を対象として表になっています。「プランニング過程(かけ算・わり算)」のチェックリストに,かけ算の順序を問う問題と同じ形式の文章題が,ありました(p.11)。

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 1番目の文章は,「家族4人にあめを5個ずつ配ります。あめは何個必要ですか。」です。
 右には「3年生学年末以上」と書かれていますが,かけ算か,わり算かに注意して場面を理解し,式に表せるかをチェックするためであり,5つの文章のうち1,2,5に限れば,2年生でかけ算を学習したときに,出題してもよいはずです*1
 それぞれの問いに対し,正解となる図や式の例は,この本に書かれていませんでした。ですが,図にすることでも,また1と2の文章題の配置(「1つ分の数×いくつ分=ぜんぶの数」に当てはめると,「5個」の5が「1つ分の数」なのに対し,「8個」の8は「いくつ分」となること)からも,あめの問題で期待される式が,5×4=20であることを推定できます。なお,2の「2人がけのイスが8個あります。全部で何人の人が座れるでしょうか。」では,「ずつ」を見つけて1つ分の数とする方略が使えず,これも,意図されたものと思われます。
 「文章題を読んで適切な立式ができるようにさせる」ことをねらいとした,かけ算の指導例は,pp.144以降となります。ただしプランニング過程ではなく統合過程が苦手な子どもへの指導です。「1ふくろ5枚入りのクッキーがあります。4ふくろ買うと、クッキーは全部で何枚になりますか。」という文章を読ませることから始めます。次に,「1つ分の数」が分かる箇所(第1文),「いくつ分」が分かる箇所(第2文の読点まで),「ぜんぶの数」を問う箇所(残り)に分け,付せん紙に書き写させます。

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 次のページでは,①と,②までについて,「絵カードを選ばせ,立式させる」と進めます。

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 ①については,真ん中の絵を,②については,左の絵を選べば,あとは5×4=20の式が立てられるというわけです。とはいえいくつか,注意すべきこともあり,p.145の袋に入った数量を表している合計6つの場面は,指導する側が用意しないといけませんし,②までで適切な場面を選べたときに,5×4の式に表すのは,また別の知識を必要とします。
 「4人に5個ずつ」のような,「基準量が後に示された問題」に対する指導例は,書かれていませんでしたが,pp.144-145の内容をアレンジして,ステップごとに正しい場面を1つと正しくない場面を複数,図にすることは,決して困難でないようにも思えます。

*1:かけ算・わり算の立式に限定しなければ,1年生でも,各場面を絵に描くことができそうですが,式なしで絵を描けるかどうかのチェックについては,「12-2. 統合過程(かけ算・わり算)」に出題があります。