かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

板書スキルのかけ算わり算

 書店で見かけて,等分除・包含除*1の板書(pp.56-57)がブログの題材になるかなと思い,購入しました。帰宅してじっくり読むと,「板書」に対する著者の思いが,伝わってきました。横に真っ直ぐ書く/並べること,縦に揃えて見やすくすること,不均等さにも味わいがあること*2,用意しておいた紙を貼り付けることなどは,なるほどと思いました。
 「かけ算の順序を問う問題」に見える問題を,詳しく見ていきます。「➋子どもの考えと考えをつなぐ」で始まる,p.17の板書にあります。横長の板書の右側には,以下の文章題が箱で囲まれていました。

あめを2人に同じ数ずつ分けます。
1人に8こずつ分けます。
あめはいくつひつようですか?

 式を検討する前に,この文章題を単体で見ると,違和感があります。あめの総数が未知の状況で,「分けます」としています。2年のかけ算の文章題なら,2か所の「分けます」は,「くばります」「あげます」「あたえます」のいずれかに置き換えると,自然な問い方になります。
 「板書の右側」と述べましたが,左側には,以下の文章題がありました。

あめが8こあります。
2人に同じ数ずつ分けます。
1人分は何こですか?

 こちらは,典型的な等分除の場面で,式は8÷2=4,答えは「4こ」と求められます。付記すると,このページの授業の対象と意図は,板書のすぐ下に「3年「わり算」の単元末には,かけ算とわり算の立式を正しくできるようになることを目指した授業を行いました。」と記されていました。
 左右の文章題は,「分けます」「8こ」「2人に同じ数ずつ」は共通して出現するけれども,異なる場面であり,式も,答えも違ってくるのを学ぶというわけです。
 わり算の文章題から派生した,「2人に・8こずつ」の件は,あめ1個を○として図にすることで,たし算の式なら8+8=16,かけ算なら8×2=16を得ています。かけ算の式の下には,「1人分のあめの数×分ける人数=ぜんぶのあめの数」という,言葉の式もありました。
 ところで「2人に・8こずつ」の文章題は,わり算の式で表すこともできます。ひつようなあめの数を□として*3,□÷2=8または□÷8=2とします。前者は等分除,後者は包含除の考えです。このように表したのなら,□=8×2でも□=2×8でも求められます。

*1:https://b.hatena.ne.jp/takehikom/20230211#bookmark-4732197564943686628

*2:「4÷4=1あまり0」から,わられる数を1ずつ増やし,わる数は4のままで,「15÷4=3あまり3」までの横長の短冊(p.13)について,どの行にもある「÷4=」が少し,整然としていません。ノートに手書きするときにも,こんな書き方でいいんだよと,示しているかのようです。

*3:https://w3id.org/jp-cos/8250233171100000