かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

いつも出てきた順に

 PDFをダウンロードし,先頭から読んでいくと,「順」の字を見かけました(p.22)。

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 割合のつまずきとして,2つがカギカッコの中で書かれ,左に赤のバツ印がついています。書き出すと,「いつも出てきた順にかけたりわったりしてしまう」と「いつも大きいほうの数を小さいほうの数でわってしまう」です。
 メインブログで,出題例を取り上げてきました。

 啓林館のPDFに話を戻すと,つまずかないよう順序を意識しよう,とはなっていません。画像のすぐ下には,「数量の倍関係(問題の文脈)を正しく把握する技能が身につくように割合の系統を組み立て直し,各学年の紙面展開も見直しました。」とあります。
 関係図はどのような図なのかが,p.23下段に書かれており,その次のページ(pp.24-25)の「演算決定に関わる図の系統」でも,関係図そして「aのb倍がc」*1が出現します。「数直線図」と呼ばれる,いわゆる二重数直線を用いた可視化も載っていますが,そこにも関係図が入っています。
 各学年の特色のうち,2年の左(p.28)の下半分は,L字型のアレイで答えが「19こ」なので,2つの因数のかけ算にはできない(たし算またはひき算も使って求める)タイプとなっています。また5年の右側(p.35)では,「問題の本質にせまる見方・考え方」が大きい字になり青の背景色がついています。個人的にその図や,直前の「文・図・式を使って比較すること」を,問題の本質と結びつけることに,違和感を持つものの,ここでの「本質」の使用は,『復刻版 算数・数学教育と数学的な考え方』に書かれた「上の図式は,A×p(=B)という「かけ算の本質(構造)」を,「Aを1としたときpに相当する大きさを表すこと」」*2を踏まえたものかなとも思っています。
 啓林館の平成27年度からの算数教科書では,「江戸しぐさ」を取り入れ,批判の対象となっていました。今回,道徳教育への配慮は,観点別特色一覧表のpp.58-59より読むことができました。事例には「自分の考えや意見を相手に伝えるとともに,自分と異なる意見や立場も尊重」などに下線が引かれ,「町内のそうじ」や「ペットボトルのキャップ集め」を例示し「公共に寄与する態度が養えるように配慮されている」としています。

*1:明記されていませんが,aとcが同種の量(から単位を除いた値の部分),bはそれらと別の量(から単位を除くと,割合)になります。

*2:https://takehikom.hateblo.jp/entry/20150720/1437344285 http://takexikom.hatenadiary.jp/entry/2017/07/18/061554