- 作者: 永野裕之
- 出版社/メーカー: すばる舎
- 発売日: 2015/06/09
- メディア: 単行本
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書名にさっそく,かけ算ですが,中身にも,これまで見たことのない,かけ算の式や適用例が載っていました.
第1章 第2節「新しい発想を生み出す整理① 【掛け算的整理】」のところです.
かけ算とは何か(p.28)のところは,ちょっと対象が狭いように思えたものの,ビジネス向けの本と割り切って読み進めました.
あなたは「掛け算」と聞いて、何を連想しますか?
「底辺×高さ」とか「速度×時間」とか「平均×人数」などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか? いずれにしても掛け算というのは「底辺」と「高さ」のように異なる意味を持つ数字どうしで行う計算です。そして掛け算をした結果には、
底辺×高さ=面積
速度×時間=移動距離
平均×人数=合計の数
のように、面積だったり、移動距離だったり、合計の数だったりといった新しい意味の値が生まれます。
著者のスコープ外なのを承知で,私が「掛け算」で連想するのは,「1.5kg×4箱」といった数量の表記です.それと去年,どこかのTogetterのコメントに,「ビールの個数表記で『6缶×4』と『1缶×24』は総数は同じでも梱包が異なる」と書いたことがありました*1.
本文に戻りまして,p.29では「安藤百福の掛け算的発想」のキャプションで,インスタントラーメンの発明が「掛け算的発想」であることを紹介しています.文章の方はふむふむなるほどでしたが,p.30の,絵入りのかけ算の式には,びっくりしました.
その次のページにも,CUP×袋麺=カップヌードルが絵になっています.
アイゼンハワー・マトリックスをもとにした「重要度×緊急度=優先順位」(p.35),「多角化で新規顧客を開拓」と題する問題の結語の「製品の新旧×市場の新旧=経営判断」(p.38)も,見たことのない式でした.
個人的な語感として,「重要度×緊急度」を項目ごとに算出し,それを高いものから順に並べることによって,優先順位が求められます.積が経営判断になるという式は,「製品の新旧」「市場の新旧」の定量化方法が思い浮かびません.
かなりページを進めたところで,文系と理系の「定義」の違いが図になっていました(p.155).
【掛け算的整理】以外には,算数・数学の活用としてびっくりする話は見当たりませんでした*2ので,“×”の誘惑事例ここにまた一つ*3といった思いがあります.
*1:脚注にて補足をしておくと,「1.5kg×4箱」の式は「1.5kg/箱×4箱=6kg」(関連:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130809/1375999854)と読み替えることで,「新しい値の意味が生まれます」が維持できています.ですが「1缶×24」には適用できません.小学校の算数では「一つ分の大きさ×幾つ分」でかけ算を意味づけておき,幾つ分が整数でなくなってもかけ算が使えるよう拡張を図ったり,長方形の面積の公式を導いたりしているのですが,こういった経緯もまた,『ビジネス×数学=最強』のスコープ外となっていると見るべきでしょう.
*2:用語で1つ,「単位量あたりの量」(p.68)が気になりました.学習指導要領の算数では「単位量当たりの大きさ」ですし,「単位あたり量」を検索してもずいぶんヒットします.
*3:前回取り上げた「誘惑」はメインブログより:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20140908/1410126682