かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

かけ算の順番の意味って?

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知ったのは: https://twitter.com/genkuroki/status/656122996541669381https://twitter.com/maisouyaF/status/656101239822770177.@さんにIDコールしておきます.
動画について,「かけ算の順番」にまつわる幾つかの側面を取り出し,軽妙なボケツッコミを入れながら8分少々の内容になったと理解しましたが,思い浮かぶことや,動画の外の情報と照合すると,気になる箇所が出てきました.
まずは小さなところから.5:52ごろのセリフの「小学校3年生が三角形の面積を「ヘロンの公式」を使って求めたらどうする?」について,面積の導入は4年だし,三角形の面積は5年です.*1
その元になっている出題(4:58ごろ,3cm・4cm・5cmの三角形)ですが,面積を求める式が複数あるのもまた,5年で学習する話となります.一言でいうと「底辺をどれにするか」です*2.「数学的にはどっちでもいい」の例として,適切なものとは思えません.
「かけ算は同数累加と倍概念」(2:57ごろ)には,外からのツッコミの余地がありそうです.これを前提とすれば,以降の「かけられる数・かける数(被乗数・乗数)」の区別も当然となってしまいます.ですが,算数においても,〈乗数と被乗数が区別される文脈〉と〈乗数と被乗数を区別しない文脈〉といった分け方がなされています.この2種類の〈文脈〉は,http://ci.nii.ac.jp/naid/110006184927より,オープンアクセスで読める論文からです.具体的な類別や出題例は,メインブログのかけ算・わり算でモデル化される場面 - わさっきで整理してきました.
あと,6:27ごろ以降のやりとりで,「教育評価」の知見が見当たらないのも,残念に思いました.本1冊を挙げるなら,ずばり『教育評価 (岩波テキストブックス)』です.ただ,この本にかけ算の話は(順序も)出ますが,手短な結果の紹介だけです.メインブログで今年はじめに書いた教育評価論から見たかけ算の順序―若柳小学校事例の別考察 - わさっきに,リンクしておきます.

*1:2年の面積の授業,というのが最近物議をかもしました:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20151002/1443732841

*2:と思ったけど詳しく書いておきます.底辺をどれにするか(複数選べる)によって,高さが一意に定まり,底辺×高さ÷2の公式で面積を求められます.式には3×4÷2,4×3÷2,5×2.4÷2が考えられます.最後の式の「2.4」は,定規で測って求めた高さです.