新型コロナウイルス感染症の影響で,実施はしなかったけれど,7月中旬以降に教育委員会や学校に配布し,Web上では2020年10月20日公開となっています。
小学校算数の大問2(2)で,以下の通り四角柱の側面積をもとに,かけ算の式の意味(何を表しているか)を出題しています。
解説資料を見ると(p.28),この出題の学習指導要領における領域・内容として,第2学年のA(数と計算)とD(数量関係),それと第5学年のC(図形,角柱や円柱について知ること)が挙げられています。
解説資料の次のページでは,解答類型が表になっています。正答の条件を抜き出します。
次の①,②の全てを書き,被乗数と乗数の関係を正しく書いている。
① 5が,底面の一辺の長さを表していること
② 4が,4つ分(又は4倍)であることを表していること
解答類型の表の中に,正答例も書かれていますが,対比のためには同じページの表の下と,次のページの,破線で囲まれた2つの解答を見るのがよさそうです。【解答類型1】の例は,次の通りです。
5は,側面の横の長さが5cmであることを表しています。
4は,側面の横の長さが4つ分であることを表しています。
だから,5×4は,側面の横の長さ5cmが4つ分あることを表しています。
それに対し,p.30の【解答類型2】の例は次の通りです。
5は,底面の1辺の長さが5cmであることを表しています。
4は,4つ分であることを表しています。
この2つの解答例のあいだで,「5」と「4」の意味の書き方に小さな違いもありますが,最も大きな違いは,【解答類型1】の例に書かれた「5×4は,側面の横の長さ5cmが4つ分あることを表しています」の情報が,【解答類型2】の例にはないことです。解説資料の「被乗数と乗数の関係が明確ではない」に該当します。
次の答案も,【解答類型2】になると考えられます。
5は,側面の横の長さが5cmであることを表しています。これがかけられる数です。
4は,側面の横の長さが4つ分であることを表しています。これがかける数です。
5が「かけられる数(被乗数)」,4が「かける数(乗数)」なのは,問題で示された「5×4」の式から読み取れます。それらを踏まえて,「5cmが4つ分ある」という情報が,「被乗数と乗数の関係」になる(上の答案には示されていない),というわけです。
次の答案は,【解答類型1】になると考えられます。「5」と「4」が何を表しているのか,そして「5×4」で何を求めるのか(「どのようなことを表してい」るか)が,示されているからです。
5cm(底面の1辺の長さ)の4つ分
ここまでについて「かけ算の順序」論争への知見を提供するなら,5×4の「意味」とは何なのか,4×5と同じじゃないのか,ということよりも,5×4をもとに(テストで,または授業などで教師が,この式を提示して),場面に基づき,5の意味,4の意味,そして5×4によってどのような数量が求められるのかを,説明できることが,「この子はかけ算についてきちんと理解している」と判断するための手段になり得る,ということです。
式を書く問題で興味深いものがあったので紹介しておきます。小学校算数の大問1(4)です。国立競技場の面積72000㎡は,わたるさんたちの学校の校庭(縦80m,横50mの長方形)の面積の何倍かを求めるにあたり,「(ア)=4000」「7200÷4000=18」「だから18個分です。」とし,この(ア)に入る式を問うものです。
解説資料の解答類型(p.19)では,「80×50 と解答しているもの」を正答としています。なお表の下には2回,「長方形の面積が(縦)×(横)(もしくは(横)×(縦))で求めることができる」と書かれており,「50×80」も正答となります。
解説資料の次のページには,【解答類型5】として「72000÷18」や「1000×4」が例示されています。「結果が4000になればどんな式でも正解」というのが,この出題においては認められないことを意味します。