かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

巻き込まれたようだ

画像内の丸あ,丸いの図から,東京都算数教育研究会(都算研)の学力実態調査が思い浮かびます.http://tosanken.main.jp/data/H27/gakuryokujitaichousa/h26kekkatokousatu2nen.pdf#page=2で公開されているのは,2年前に実施のものです.「数と計算 数量関係」「量と測定 図形」で1年おきに調査されていて,今年度は「数と計算 数量関係」となります.
東京書籍のhttps://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou/sansu/files/web_s_sansu_gakuryoku1.pdf#page=2に見られる「C地区学力調査」は,この出題がもとになっているものと思われます.
「掛け算」の文章題は,小問・ふりがなを含め,変更なさそう*1ですが,次の大問が,ツイート内の画像と,2年前の出題とで,少し異なっています.画像から読み取れる大問4は,「こうじさん、ゆう子さん、さとみさん、あきらさん」「ちょうど2000円ずつ お金が 入って います。」「4人が 話しています。」なのに対し,http://tosanken.main.jp/data/H27/gakuryokujitaichousa/h26kekkatokousatu2nen.pdf#page=3は「こうじさん、ゆう子さん、あきらさんの さいふの 中には、ちょうど2000円ずつ お金が 入って います。さいふの なかみのことを 3人が話しています。□の中に あてはまる数を かきましょう。」でして,人数が異なります.
https://twitter.com/klasicista/status/844330541751054336https://twitter.com/klasicista/status/844350572350222336のツイートも読みました.この種の文章題は,2年のどの教科書にも載っています*2ので,お子さんは授業で学習済みのはずです.
交換法則を認めた上で,a×bとb×aとで式の意味(表すもの)が異なるよというのは,https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou/sansu/files/web_s_sansu_gakuryoku1.pdf#page=2の「2×5になる問題と,5×2になる問題」が該当するほか,海外では,「かけ算の順序」「たし算の順序」についてどのような見解を出していますか? - わさっきで整理を試みてきました.
「こんな出題があったんだが」という事例の紹介は,いわば「点」のとらえ方です.継続して(ときには一部を変更しながら*3)出題するのを見ながら*4,正答率などを比較するのは「線」のとらえ方です.類似した出題との比較や,学級での指導,そして教科書への反映まで行けば,「面」や「空間」になるでしょうか.

*1:ただ,この種の調査をお子さんが持ち帰ったのには,少し驚きました.先生はマルやバツをつけ,集計してから,返却し,お子さんは「しき」の「3×4」に2本線を引いて「4×3」を上に書いたのでしょうか.

*2:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20140629/1403967600

*3:「掛け算」の文章題は,平成22年度と24年度で少し出題形式が異なっています.http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20131026/1382734792 http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130219/1361220251#1

*4:初等教育に直接,携わらない我々でも,公開されているものを「見る」のは可能です(解答者数や正答率は必ずしも分かりませんが).例えば:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20131229/1388265996

A×B=Cの場合,AとCの単位が同じ

リンク先は…

読んでいくと…

小学校2年の算数で、掛け算を習います。
掛ける数と掛けられる数という内容があります。
2×3=6の場合、2が掛けられる数で3が掛ける数。
泥棒2人が追いかけられる、警官3人が後から追いかけると覚えると覚えやすいです。


A×B=Cの場合、AとCの単位が同じという掛け算のルールがあります。
「ウサギが5羽。耳は全部でいくつ?」という問題に、2×5と書けば2本耳のウサギが5羽で耳10本となりますが、5×2と書くと5本耳のウサギが2羽という意味になる。
強引に5羽の2本耳のウサギと考えたとしても、答えが10羽になることに(笑)

ああ,わかりやすいですね.ただ,2017年に書かれた文章で,間違いのかけ算の式に2種類の解釈(「5本耳のウサギが2羽」と「答えが10羽」)を示しているのを読むのは,初めてです.かけ算の順序論争について(日本語版) - わさっきのB-3とB-4が該当しますし,本だと2003年に出た『板書で見る全単元・全時間の授業のすべて 小学校算数2年〈下〉』があります.
これに対して,冒頭のツイートをした方が,昨日,コメントをしています.「そのようなルールの存在はどこかに根拠があるのでしょうか?」とのこと.
2〜3年の算数で,教科書や問題集や,学力テストを見ていたら,「A×B=Cの場合、AとCの単位が同じ」というのは,経験的に得られてもおかしくないのですよね.リンク先記事の出だしの「小学校2年の算数で、掛け算を習います。掛ける数と掛けられる数という内容があります。」と,6番目のコメントの「縦3m、横4mの長方形の面積を求める際に、3m×4m=12mとなってしまい面積の単位になりません」とで,対象学年が異なっていることにも,配慮をしたいものです.
実際,2〜3年の算数の教科書や出題で,目にしてきた正解は,「A×B=Cの場合、AとCの単位が同じ」となるものばかりです.
その理由は,小学校学習指導要領解説算数編から推測できます.乗法が用いられる場合とその意味では,「乗法は,一つ分の大きさが決まっているときに,その幾つ分かに当たる大きさを求める場合に用いられる。つまり,同じ数を何回も加える加法,すなわち累加の簡潔な表現として乗法による表現が用いられることになる。また,累加としての乗法の意味は,幾つ分といったのを何倍とみて,一つの大きさの何倍かに当たる大きさを求めることであるといえる。」と記載されています.
「ウサギが5羽。耳は全部でいくつ?」という問題に,2×5と式を立て,(同数)累加に基づき2+2+2+2+2=10と求めれば,2も10も耳の数であり,かけられる数の2も同じです.かける数の5は,ウサギの匹数で,異なりますね.
小学校学習指導要領解説算数編で例示されている「3×4の式から,「プリンが3個ずつ入ったパックが4パックあります。プリンは全部で幾つありますか。」というような問題をつくることができる」に関しても,3と,積の12は,プリンの数であり,4はプリンの数ではなくパック数です.
海外文献では,Greer (1992)が関連します(かけ算・わり算でモデル化される場面 - わさっき).かけ算の導入時は,「同数のグループ(Equal groups)」が基本で,「等しい量(Equal measures)」もあっていいと思います*1が,いずれもかけられる数と積が同じ種類の量であり,かける数はそれらと異なります.
ちょっとだけ,注意したいのは,「A×B=Cで,AもBもCも単位が同じ」となる場合もあることです.
2年ではアレイが考えられ,その場合には,B×A=Cも,認められるはずです.小学校学習指導要領解説算数編では,「アレイ」の語こそないものの,12個のおはじきを工夫して並べる活動により,ある並べ方に対して「2×6 または 6×2」と記していまして,2も6も(そして積の12も)おはじきの個数を表します.
また別の「A×B=Cで,AもBもCも単位が同じ」が,3年に出現します.啓林館の乗法的オペレータ|算数用語集によると,「赤の車は2m走りました。青の車は赤の3倍,黄の車は青の2倍走りました。」に対し,「3倍」「2倍」「3×2倍」を含む関係図をが見られます.
「3倍して2倍したら6倍だ」というわけで,これもまた「A×B=Cで,AもBもCも単位が同じ」を満たす関係なのです.
ですがこの場面で,「2×3倍」が許されるかどうかは,わかりません.黄の車の走った長さについて,2×2×3と式を立ててみたとき,「2×2」は何を表すのかというと,答えられないのです(2×3×2と書いたのなら,その中の「2×3」は,青の車の走った長さであり,「3×2」は,「黄は赤の何倍になるか」を表したものとなります).


https://twitter.com/sekibunnteisuu/status/842867751920140289のリンクで,http://suugaku.at.webry.info/201102/article_4.htmlも読みましたが,同時期に出た『小学校指導法 算数 (教科指導法シリーズ)』と照らし合わせて読みたいところです*2

*1:http://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/sansu/WebHelp/02/page2_16.htmlの「長さが 6cmの おもちゃの 電車が あります。2つ分の 長さは 何cmに なりますか。」が該当します.

*2:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130214/1360776013#%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E6%8C%87%E5%B0%8E%E6%B3%95%20%E7%AE%97%E6%95%B0

分速3kmで5時間移動したら何km進むか

最近はTweetDeckで,#掛算を含むツイートを眺めるようにしているのですが,その中で,2人のやりとりにこのハッシュタグがあるのを見かけ,ツイートをたどってみました.
発端は以下のものです.

ここに振込伝票を入れたリプライが入って,2人でやりとりしていきます.IDは差し控えますが,発端のツイートをした人のほうが一貫しており分かりやすい内容となっています.
以下のやりとりにも,なるほどの思いがあります.
1:

2:

もうひとかたのツイートに出現する「(60分×5)分」は,高木*1に出現せず,構文的にも不適切だろうなと思います.「5時間は何分か」を,かけ算の式で表してみると,例えば,60×5=300ですが,ここに単位をつけるなら「60分×5=300分」です.
これを「(60分×5)分」と表記するのは,「カナコさんは3本のえんぴつをもっています。サワコさんから2本もらいました。タダコさんから1本もらいました。ぜんぶでなん本あるでしょう」という文章題に対し「3+2=5本+1=6本」と書く,というのと同様の性急さを覚えました.
ともあれ,「分速3kmで5時間移動したら何km進むか」を,被乗数と乗数に注意してかけ算の式に表すと,次のようになります.

  • 1分間の移動距離は3km
  • 1時間(60分)の移動距離は,3kmの60倍,すなわち3km×60
  • 5時間の移動距離は,その5倍,すなわち(3km×60)×5

ここから結合法則を用いて,(3km×60)×5=3km×(60×5),としたいところですが,高木では名数を含む式に対しての適用は,想定されていません.とはいえ,「分速3kmで5時間移動したら何km進むか」に対して次のように考えることは可能です.

  • 5時間は1分間の何倍か,というと,60×5〔=180倍〕
  • 1分間の移動距離が3kmなら,5時間の移動距離は,3km×(60×5)

ここで「60×5」の式に単位をつけていないのは,3kmに対して乗数として作用することを念頭に置いているからです*2.今の算数でも考慮されており,啓林館のサイトでは乗法的オペレータの中で例示しています.
高木貞治が書いたころ,パー書きの量(の算術への適用)をうかがい知ることはできませんが,「分速3kmで5時間移動したら何km進むか」に対してパー書きを含む式にするなら,「3km/分×(60分/時間×5時間)」はどうでしょうか.

*1:例えば,http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1087461/16.「掛ケ算(乗法)」は,コマ番号16から始まります.

*2:「5時間は何分か」に限れば,5×60=300で求めても差し支えないのですが,3km×(5×60)と書き,ここに結合法則を適用して(3km×5)×60と書いてみると,もとの問題の状況において「3km×5」に適切な意味づけをすることができない,という問題点も浮かび上がってきます.

2017年の掛け算の順序論争・共感を得る手段

ツイート(https://twitter.com/sekibunnteisuu/status/836918003736289280)から知りました.ブログ記事本文に対して,ある種のコメントがついていないのが,まず気になりました.承認制とのことで,ツイート主さんも書いたけれど掲載されなかった,という可能性が考えられます.
本文に戻りまして,「みかんを1人5個ずつ3人に配ったら 何個でしょう?」の問題から始まっています.おそらくwikipedia:かけ算の順序問題には目を通しており,『かけ算には順序があるのか (岩波科学ライブラリー)』も,数学者は「順序」についてどのような見解を出していますか? - わさっきで挙げた書籍も,読んでなさそうだなという印象を持ちました.
中盤の「六年生になって(略)私は黙って〇にします」は,他と照合を試みてもよさそうです.5年までの学習内容から出題され,例年,6年生が4月に取り組む「全国学力テスト」では,解説資料に「乗数と被乗数を入れ替えた式なども許容する。」と記載されています.その意味で,「黙って〇にします」と合っています.
ですが,国立教育政策研究所が実施した調査の中に,5年でも○にしている出題もあります.「水そうに8Lの水が入っています。この中に0.5Lの水を2はい入れました。水そうに入っている水は,全部で何Lでしょう。」に対し,8+0.5×2のほかに8+2×0.5も,正答としているのです*1
とはいえこの記事の特色は,終盤の,次の2つに現れています*2

私がそもそも理解不能なのは
いちいち×にされたことを
親に言う子供です。

ですから、本当に不思議なんです。
その×にされた少年がいちいち親に言ったことが。

本人から親に言うまでもなく,子どものテストの点数や,授業で何を学んでいるのかが気になる親からすると,テストの解答を見て,どうしてバツなんだと思うのは,自然なことだと思っています.
そして子どもの教科書やノートを見たり,先生に尋ねたり,書店で本を参照したりするよりも,写真を撮って「ネットにアップ」することで,マジレスもあるかもしれませんが,むしろ手軽に,「共感」を得るものとなっているわけです.
共感を得る手段が,今回のブロガーさんと,ネットで手軽にアップする人と,自分とで,異なってそうだなあと感じた記事だったのでした.

*1:http://www.nier.go.jp/kaihatsu/tokutei/04002030200004000.pdf#page=103, http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20120915/1347653753

*2:「×」の文字を,乗算記号と不正解(バツ,ペケ)の両方の意味で,1つの記事の中で用いているのも,興味深いものでした.

乗数ト被乗数トヲ入レ換ヘテモ積ハ変ハラヌト云フヿハ

読みました.明治33年(1900年)に出版されたという,『数学教授法講義筆記』のコマ番号161は,http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/811596/161よりアクセスできます.
交換法則は六ヶ敷いというのは,左側のページ(p.300)にありました.書き出してみます.

一体乗数と被乗数とを入れ換へても積は変わらぬと云ふことはこれは通俗を離れて居て六ヶ敷いことです,厳密に論ずれば数を二通りに区別するの必要があります,一つは「オルヂナルナンバー」で他の一つは「カルジナルナンバー」であります,此「オルヂナルナンバー」の方は第一,第二,第三と云ふ様に数ぞえて何度数ぞへたかの度数を表はすもので,「カルヂナルナンバー」の方は物を数ぞへて直ちに得たる数,即ち五とか八とかの様なものです,即ち乗数は「オルジナルナンバー」被乗数は「カルヂナルナンバー」であつて,既に数の観念より違って居りますから乗数と被乗数とを入れ換へると云ふことは余程六ヶ敷いことです,寄せ算などは双方共に同じものでありますが,掛け算では双方とも数の性質が違って居ります,故にこれを本当にやるとすると中中六ヶ敷いものです,併し此所では此本にある様にして行くのです,尤もこれは4と3とに限らず実際は幾つにやつても善いが

文中に,見慣れない表記が出てきました.“ヿ”と記されています.前後も見て,どうやら「こと」と読めばよいらしいと見当をつけてから,検索すると,合っていて,wikipedia:コトwikipedia:合略仮名を見つけました.なお,原文では「コト」も出現しています.
「六ヶ敷い」は「むつかしい」ですね.六借、難、六ヶ敷、すべて同じ読みです - 日本語おもしろ発見で整理されています.
オルヂナルナンバーはordinal numberで順序数または序数,カルヂナルナンバーはcardinal numberで集合数または基数と呼ばれるものです.
これらを踏まえて,書き出した内容についてですが,乗数を順序数,被乗数を集合数と解釈するかけ算のモデルで,最も適合しているのは,数直線です.例えば4×3であれば,0から4になるまで進めて矢印を描き,これを現在で言う「一つ分の大きさ」とし,「かけられる数」に対応させます.次に4から8へ,8から12へと,同じ長さの矢印を作れば,一,二,三と数えることができて(これが「いくつ分」「かける数」),4×3=12を得るという次第です.
「一,二,三と数える」のも集合数なのではないか,という疑問を持つ人に向けて,補足すると,数直線モデルで「一つ分の大きさ」に当たる,矢印の長さは,整数に限らず,小数や分数でもかまいません.それに対し,矢印が「いくつ分」のほうは,基本的に「0.3個」などとすることができず,「いち,にい,さん,…」と数えることになります.この数え方*1が,順序数に対応しているのです.
なのですが,現在に至るまで,さまざまなかけ算のモデルが考案され,授業で使われたり学術文献にまとめられたりしているのにも,思いを致したいところです.『数学教授法講義筆記』より前に書かれ,「1」をアレイのように並べて「凡て或る数に或る他の数を掛けたるものと、後の数に始の数を掛けたるものとは互に相等し」と解説しているものがあります(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/826848/301888年のアレイと掛け算 - わさっき).なお,数直線のモデルは古くさいとも非実用的とも思っておらず,例えばAnghileri & Johnson (1988)(asin:0205110762, p.161)に,Number Lineとして,図とともにかけ算とわり算の関係などが説明されています.

*1:集合数・順序数を使用していませんが,例えば中島(1968a, 1968b)における「拡張」の前の「累加」の考え方や,Greer (1992)におけるEqual measuresも,同等と見ていいでしょう.

Things That Come in Groups: Multiplication and Division

Googleブックスの当該書籍について,検索なしの状態は,https://books.google.co.jp/books?redir_esc=y&id=1bPlAxveQ1YCでアクセスできます.本文は読めないようで,フリーワード,または,ページ下部の語をクリックすることで,検索ができます.
交換法則をどのように指導しているのか,興味を持ち,commutativityやcommutativeで検索してみたものの,何も出ませんでした.multiplicandやmultiplicatorも同様です.factorだと「この書籍の 13 ページで factor が見つかりました」と出て,そのうち3つの該当箇所も表示されました.factorsに変えると,「25」に増えました.
Amazonで調べたところ,以下の2冊が見つかりました.

Things That Come In Groups: Grade 3

Things That Come In Groups: Grade 3

後者は「Workbook版」です.
1999年代後半以降の,かけ算・わり算指導の仕方として,興味深い本です.なお,英語情報としては,その後に出された,http://www.globaledresources.com/resources/assets/042309_Multiplication_v2.pdfhttp://www.corestandards.org/Math/Content/mathematics-glossary/Table-2/との照合も,行っておきたいところです.
追記:Amazonの2冊について,はてなダイアリーのisbn/asin記法で詳細が出てくれないので,それぞれのURLを書いておきます.

追記2:https://twitter.com/temmusu_n/status/834404248259432449から3ページ分を読むことができます."3 treats per day for 8 days is equivalent to 24 treats (3×8=24) (3 per group in 8 groups is 24 total)"と"8 days with 3 treats per day is equivalent to 24 treats (8×3=24) (8 groups with 3 per group is 24 total)"により,「3食を8日分」の式は3×8=24でも8×3=24でもいいとしています.

こんなの考えた・これ見つけた

直後の3つの返信*1が,「かけ算の意味」あるいは(日本の)小学校の算数指導で得られる答えになっています.
なお,「(2)3個が実は3色団子だったときの団子の総数」と,返信ツイートのうち「こうした二義的なケースを文章題にして児童に課すべきではない」については,関連する出題が,以下の本に載っています.

誰もができる子どもに活用力をつけるワクワク授業づくり―第2回RISE授業実践セミナーの報告

誰もができる子どもに活用力をつけるワクワク授業づくり―第2回RISE授業実践セミナーの報告

デカルト積(直積)でモデル化できる場面が用いられており,デカルト積のピクトリアル - わさっきで他の文献とともに紹介しています.「3種類のお菓子がそれぞれ4個ずつあります。お菓子は全部で12個です。」といった「お話をつくってみる」(作問)をさせるにあたっては,「深入りすると混乱を招く心配があるので、軽く触れる程度にする」ことが,教師の支援と留意点の欄に記載されています.
デカルト積(直積)でモデル化できる,かけ算の場面は,小学校2年の算数の教科書にも,例えばロッカーの配置などで,目にすることができます.その場合のかけ算の式は,1つとは限りません.なお,アレイや集合の直積は「累加の考えに帰着して処理できること」を,1960年代に中島健*2が指摘しています.

リンク先はhttp://www.nichibun-g.co.jp/library/sansu_shoho/sansu_shoho11.pdfです.「式の順番を入れ替えて答えをいったりするような練習も取り入れていく」とあるのですが,文書全体が「九九の指導」ですので,ここは「いんいちがいち,いんにがに,…」と順に唱えていく以外の方法を提案していると,読むべきでしょう.
はじめは例えば6の段など段を限定し「ろくさん?」「じゅうはち!」「ろくは?」「しじゅうはち!」などとやりとりするのが,想定されます.そのうち,段の固定も取り除いて「はちろく?」「しじゅうはち」と答えられることを目指します.
ところでこのPDF文書は,「1つ分の数×いくつ分」でかけ算の式を表すものとし,そうでない立式は不正解とする,という指導に対しては何も言っていません.
そこで,日本文教出版のサイトにある評価テスト例を見ておきます.
「2年下」のPDFファイルを見ると,式の表現*3に関連するところではすべて「1つ分の数×いくつ分」が意図されています.
2つの数をひっくり返してかける,文章題もあります.「10 かけ算(2)」の大問6で,「ふくろが 9つ あります。1つの ふくろに 8こずつ あめを 入れます。あめは,ぜんぶで 何こ いりますか。」に対し,式と答えを書く欄が設けられています.〈解答編〉を見ると,式の正解は「8×9=72」となっています---順序を問わない解答では,「(順不同)」が添えられていますが,ここにはありません.


先行事例・関連情報を踏まえることなく,「こんなの考えた!」「これ見つけた!」と,Twitterで問いかけても,得られる結果は決して多くならないように思いながら,自分の情報整理を主な目的として,この記事を書き上げました.

*1:https://twitter.com/flute23432/status/821987066741276672, https://twitter.com/flute23432/status/821987147913641989, https://twitter.com/flute23432/status/821987307431469056

*2:http://ci.nii.ac.jp/naid/110003849391

*3:「式の表現と読み」といえば,小学校学習指導要領の算数の「D 数量関係」の領域です.文科省サイトでダウンロードできる,小学校学習指導要領解説算数編の2つのPDFで「式の表現」を検索してみると,第2章に何度か出現し,各学年の内容を詳しく述べた2番目のPDFファイルではヒットしませんでした.