かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

運んでくる女の子目線について

 タイトルの上に「2024.05.06」の日付があります。本文を読み進めると「今月7日の投稿」と書かれていて,ちょっとびっくりしました。「ネット上では」から始まるカギカッコの並びと合わせて,どこにいつ投稿したかを知ることができません。
 画像で検索したところ,https://twitter.com/k_migaki/status/1776950474824196413を見つけました。「午後9:29 · 2024年4月7日午後」のポストです。女の子か母親か,判然としませんし,運び手の右下の「))」の形状の線が,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』p.84の「他の数量を追加」を表しているように見えます。
 冒頭のページの本文にある,「画像は過去の教員用指導書のもので、現行の教科書に同様の問題は載っていない」について,類題を書籍で読むことができます。

 春子さん,夏子さん,秋子さん,冬子さんにそれぞれ3枚脚注を転載します。

*3: (略) 『算数科のための基礎代数』p.59の問題7について,(3+4,4+3の)「どちらも正しい」としていますが,児童Bが考えたという操作は不自然(花子さんが持ってきた4個を乗せた皿の上に,いったん太郎君の3個を乗せて,皿を取り替えるのは,手間がかかるし非現実的)な上に,そのような操作をしたとしても,問題文の記述において花子さんの操作は数量関係を得るにあたり必須(本質)ではなく,客の太郎君を基準に「増加」の状況を捉えるべきと言えます。

 「p.59の問題7」は,以下の通りです。

太郎君は,花子さんが働いているケーキ屋さんに行き(イートインです),3個のケーキを注文しました.もっと食べたいと思い,さらに4個のケーキを注文し,花子さんが持ってきました.全部でケーキは何個になりますか.

 「太郎君は」「もっと食べたい」「花子さんが持ってきました」から,「太郎君を基準」が読み取れます。問題文の後ろを「さらに4個のケーキを注文しました.全部でケーキは何個になりますか.」に書き換えれば,花子さん基準にできるかもしれませんが,時間経過を考慮すると,その場合も式は3+4であり,4+3は不自然です。
 ここまでの件,算数の授業で実際に出題されているかまでは,書かれていませんでした。『算数科のための基礎代数』の著者は,今回の「2+6=8」「6+2=8」の画像や,トランプ配りのかけ算への適用のネット上の投稿を既読で,いずれも教科書や指導事例の裏付けを得ることなく,同書で取り上げている可能性もあります。
 ところで「3+4」「4+3」というと,朝三暮四を連想します。高木貞治数学の自由性』の一節や,後の本で「4+3≠3+4」という式が書かれたのを,朝四暮三 - わさっきhbで取り上げています。

 算数の「たし算」で,興味深く,今後の進展に期待しているのは,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』のp.216,「(三角形の数)+2=(周りの長さ)」の式です。第4学年,C(変化と関係)の領域になります。
 左辺の「三角形の数」と右辺の「周りの長さ」は,異なる種類の量です。かけ算なら,かける数で「次元を変える」のが可能ですが,たし算なので同じようにはいきません。また「2+(三角形の数)=(周りの長さ)」も想定されていません。「三角形の数に,2をたすと,周りの長さになる。」と「2に,三角形の数をたすと,周りの長さになる。」とを比較すると,「伴って変わる二つの数量」を表しているのは前者となります。
 最初にこの「正三角形の数と周りの長さの関係」を読んだときは,1年で習う加法の意味に加わった「異種のものの数量を含む加法」で説明ができそうに思いました。現在では,それを根拠とすることもなく,「帰納的に考える」ことにより,たし算の式で表せる例を示したものと理解しています。