かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

減点や,×をつけることへの関心


 「減点する根拠」は,教科書と,算数教育の2年・かけ算の解説書や学習指導案を読めば,容易に得ることができます。以下の2点を学習した上での出題だからです。

  • かけ算は,「1つ分の数×いくつ分=ぜんぶの数」の式で表す。
  • □×△と△×□とでは,答えは同じだけど,意味が違う。

 メインブログ(わさっきhb)のかけ算の順序論争について(日本語版)教育評価論から見たかけ算の順序—若柳小学校事例の別考察積に基づく乗法の認識についてではそれぞれに出典を示して情報整理を行っています。1冊,書籍を挙げるのなら,『小学校指導法 算数』の「第2学年や第3学年では、読み取った数を、「1つ分の数×いくつ分=全体の数」と表現できることが重要であり、逆に、この立式ができているかで、数の読み取りができているかを判断できる。」*1が思いつきます。
 ツイッターでは,1つ分・いくつ分は特定できないという指摘を見かけますが,Greer (1992)のEqual groupsまたはEqual measuresでモデル化される場面では,それらは一意に定まります*2。また同文献のCartesian productでモデル化される場面も,(日本の算数の)2年のかけ算の学習で見ることができ,その場合には□×△と△×□の両方が,場面を表す式であるのを推奨する状況をよく見かけます。
 冒頭のツイートをもとに,別の観点で検討を試みます。問題意識は,「学校の先生は好んで,答案に×をつけたり,減点したりしたがるのか?」です。
 2年のかけ算に関して,多く目にする情報は,子どもたちそれぞれのテストの点数や,問題ごとにみた正解率の高さや低さ*3ではなく,「かけ算でこんなことができた!」です。検索を通じて,以下のページを知りました。

 URLの一部のほか,一覧をもとに,2016年3月に公開されたものであることが分かります。現行の学習指導要領および解説よりも前の学習内容です。「14まいの生活科カードを,2×7と7×2のどちらでも求められることを発見!」のところは,上述のCartesian productに関するものですし,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』の「3×4,又は4×3と式で表すことができる」の事例と同等である,ということもできます。
 「学校の先生は好んで,答案に×をつけたり,減点したりしたがるのか?」に対する個人的な解答はもちろんノーです。教育評価(近年では学習評価)の用語を用いるなら,学習者個人および/または学習者集団の問題への正誤が強く意識されるのは,診断的評価・総括的評価・外在的評価であるのに対し,形成的評価を含む学習の段階では,正誤を記録にすることの重要性が低くなります。「かけ算でこんなことができた!」の事例は,形成的評価と密接に関連します。
 2年のかけ算の授業事例を取り上げた,当ブログの記事をいくつか並べておきます。

 減点や不正解を含まない,海外のかけ算の授業事例で,印象に残っているのは,メインブログで取りまとめてきました。