かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

小3算数・計算の順序

 タイトルを含め,「本時の展開」の前に5つ,「結合法則」が書かれています。
 「本時の展開」となる問題場面は,教師の側が3つに分けて提示します。

クッキーの箱が5箱あります。全部でクッキーは、何枚ありますか。

箱の中を見せますね。

袋の中には、3枚ずつクッキーが入っています。全部でクッキーは何枚でしょうか。式を書いて考えてみましょう。

 「箱の中」には,3枚ずつの袋が,2袋,入っています。
 式として「(ア)① 3×2=6 ② 6×5=30」と「(イ)① 2×5=10 ② 3×10=30」が左右に表示され,それぞれ別の児童がその考えを説明します。
 数量は異なりますが,3つの数のかけ算で,2種類の求め方があることは,以前に記事にしていました。

 ここで,教育出版の令和2年度の算数教科書『小学算数3上』p.18,「3つの数のかけ算」の文章題と比較します。問題は「1こ50円のドーナツが,1箱に4こずつ入っています。2箱では,何円になるでしょうか。」です(最初の「箱」の上に,「はこ」と,読みがなが振ってあります)。はるさんは「50×4=200 200×2=400 答え 400円」として求め,ゆきさんは「4×2=8 500×8=400 答え 400円」です。最終的に「50×4×2=50×(4×2)」という式にまとめています。
 この箱売りの問題で,2通りの計算ができることは,次の図のように表されます。

 小3算数「計算の順序」のページで興味深かったのは,「つまずいている子」のところです。

A つまずいている子
立式ができない。または、2×5=10×3=30と2つの式を誤って等号で結んでいたり、2×5×3と掛ける数の順番が場面と合っていなかったりする。

 「2×5×3と掛ける数の順番が場面と合っていなかったりする」に着目すると,3つの数のかけ算においても,「かけられる数とかける数の順序」には注意しないといけない,というわけです。
 ただし,このことへの配慮は,同ページが初出というわけではありません。

《箱売り》

(略)

1こ90円のシュークリームが、1はこに3こずつ入っています。
2はこ買うと、代金は何円になるでしょう?

(略)
この関係式では,《倍の合成》と同じく,2番目の因数を抜かしたかけ算に,意味を与えることができません.(略)もとの学習指導案では,自力解決の段階で,「90×2=180 180×3=540」という式を,予想される児童の反応として載せています.しかし「机間指導する」とも書かれており,この授業では間違いとみなしています.

 このシュークリームの問題を含む,調布市立杉森小学校のPDFファイルは,リンク切れとなっており,https://web.archive.org/で該当のURLを与えても「Sorry.」と出ます。
 ともあれ,小3算数の「乗法の結合法則」を通じて学習する,あるタイプのかけ算の文章題について,かけられる数とかける数の意味や式に表す順序に配慮した上で,「かける順序(計算の順序)」を変えるのはよい(それぞれ説明できる)という事例を,2024年に再発見できました。
 ところで,「袋の中に3枚ずつ,1つの箱に2袋ずつ,5箱で何枚?」というシチュエーションは,箱が登場するものの,価格の情報がなく,箱売りではありません。ページを下まで見ていき,以下の「評価問題」は,箱が出現しないものの,《箱売り》と同等と言っていいでしょう。

5円の切手が4まいつながっている切手シートがあります。この切手シート2まい分のねだんはいくらですか。2通りの仕方で考え、それぞれ1つの式で表しましょう。