かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

正解は×

 小学校2年のかけ算の単元でありがちな文章題を並べてみます。
 まずは次の2つです。

  • 2つの皿にそれぞれ3個のアメがのっています。アメは全部で何個ありますか。
  • それぞれ3個のアメが2つの皿にのっています。アメは全部で何個ありますか。

 これら2つは,同じ状況を表します。「1つ分の数×いくつ分=ぜんぶの数」に当てはめると,「3」が「1つ分の数」,「2」が「いくつ分」になり,期待される式は3×2=6,答えは「6個」です。
 次の2つだと,どうなるでしょうか。

  • 2つの皿にそれぞれ3個のアメがのっています。アメは全部で何個ありますか。
  • それぞれ2個のアメが3つの皿にのっています。アメは全部で何個ありますか。

 前者は,前述のとおり「3×2=6 答え6個」です。後者は,「2」が「1つ分の数」,「3」が「いくつ分」になり,「2×3=6 答え6個」となります。
 さて,「2つの皿にそれぞれ3個のアメがのっています。」と「それぞれ3個のアメが2つの皿にのっています。」を隣接して並べ,どちらも同じ場面(状況,数量の関係)だよというような出題形式は,教科書に掲載されているでしょうか? 授業で活用されているでしょうか?
 教科書展示会で目にしてきた限り,平成27年度・令和2年度・令和6年度の算数教科書に,この種の対置は思い浮かびません。
 授業で活用しているという事例も,持ち合わせていませんが,活用することは,可能なように見えます。「2つの皿にそれぞれ3個のアメがのっています。アメは全部で何個ありますか。」の文章題に「2×3=6」という式を書いた子どもがいたら,「『それぞれ3個のアメが2つの皿にのっています。』と同じことでしょ」と,先生が指導するか,まわりの子どもがアドバイスするのです。文章題ではありませんが,『坪田耕三の算数授業のつくり方』で紹介された,6の目のサイコロをめぐって「他の仲間みんなが違う違うと言うのです」という話*1が,近い事例と言えます。
 「2つの皿にそれぞれ3個のアメがのっています。」と「それぞれ2個のアメが3つの皿にのっています。」と同様の文章題のペアについては,見覚えがあります。

 東京書籍『新しい算数2下』ではp.21です。「つぎの 2つの もんだいの しきと 答えを それぞれ 書き,くらべて みましょう。」から始まり,(1)は「えんぴつを 1人に 2ほんずつ,5人に くばります。えんぴつは ぜんぶで 何本 いりますか。」なのに対し,(2)は「えんぴつを 2人に 5本ずつ くばります。えんぴつは ぜんぶで 何本 いりますか。」です。どちらも,「2」が先,「5」があとに出現しますが,数量の関係は異なります。(1)と(2)のそれぞれに,式と答えを書く欄があり,その下に「かけ算の しきの いみを 見なおそう」と書かれています。「 (1),(2)の もんだいの 1つ分を あらわす 数は,それぞれ いくつですか。」という小問があるほか,「「1つ分の数」×「いくつ分」=「ぜんぶの数」だったね」が,しほ(キャラクター)による吹き出しとなっています。

 思いがけないところから,類題がダウンロード可能になっているのを知りました。

 「2年 うでだめシート かけ算③ 大問4」です。

 2つの文章題は,「あめを 1人に 2こずつ 3人に くばります。あめは ぜんぶで 何こ いりますか。」と「あめを 2人に 3こずつ くばります。あめは ぜんぶで 何こ いりますか。」です。
 末尾の解答例では【略】となっています。「かけ算は「1つ分の 数」×「いくつ分」=「ぜんぶの 数」で あらわしたね。」に注意すると,結ぶ線は以下のように,×の形状になることが期待されます。

 本記事を作成する契機となった,Xのポストを3つ,挙げておきます。