かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

「かけ算の順序・おすすめ文献10選」補遺

 12月16日にリリースしたエントリです。かけ算の順序史上最も重要なエントリ10選と同時期に公開しようとして,文献の洗い出しをしたあと,1か月ほど手を着けておらず,奮起して取りまとめました。
 はてな匿名ダイアリーのサーバーの仕様なのか,いくつかのエントリにリンクを張ることができませんでした。以下に記しておきます。

 「5. 守屋誠司(2019). 小学校指導法 算数 改訂第2版」の解説の文章について,当ブログでの記載は以下の通りです.

この例からわかるように,乗法では,数の位置ではなく,数が意味する内容に注目して,どの数が1つ分の数であるか,いくつ分はどの数かをしっかりと読み取ることが大切である。第2学年や第3学年では,読み取った数を,「1つ分の数×いくつ分=全体の数」と表現できることが重要であり,逆に,この立式ができているかで,数の読み取りができているかを判断できる。

乗法の立式について,実際の指導では,乗法の演算の意味を深めるために,かけられる数とかける数の順に立式する。その主意は,問題に出てくる数の,何が1つ分の大きさで何がいくつ分であるかをしっかりと読み取らせることにある。この順の立式ができているかどうかで,数の読み取りができているかを判断することができるからである。

この例から分かるように、乗法では、数の位置ではなく、数が意味する内容に注目して、どの数が1つ分の数であるか、いくつ分はどの数かをしっかりと読み取ることが大切である。第2学年や第3学年では、読み取った数を、「1つ分の数×いくつ分=全体の数」と表現できることが重要であり、逆に、この立式ができているかで、数の読み取りができているかを判断できる。

 トラックバック記事が,ついていました。

 読んでから,2011年の本の記述が,『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』を先取りしていることを思い出しました。『小学校指導法 算数』の「立式」を含む文章の一つ前の段落(p.91)について,はじめと終わりを書き出します。

7. 乗法と除法の計算
(1) 乗法(かけ算)
 乗法を指導する意義は、新たな計算方法の獲得にあるが、子どもからすれば、それぞれの固まりにあるすべての数を知っていて、それらを加えて計算する加法の世界から、すべて同じ数ずつあるかたまりがあって、その内の1つ分がわかっているときに簡単に全体の数を求められるという、加法とはまったく違った計算の世界に入ることにある。(略)教科書に掲載された絵柄を使って教室の中だけで九九を学ぶだけでは、実生活の中にある九九の世界に気付きにくい。そこで、生活科などと関連させながら、スーパー見学をし、乗法が適用できる事例を見付けて、それをまとめる活動を是非ともさせたい。もちろんその前に、教師は、九九の各段の実際例を豊富に見付けておいて、教材として使う工夫は必要である。

 『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』で関連するのは,pp.128-129,「ものの個数を数える際に,数のまとまりに関心をもつ活動~乗法との出合い~」を小見出しとして始まる文章です。
 『小学校指導法 算数』の上記引用と同じページに掲載されているモノクロ写真は,3匹ずつパックにされたさんまと,「16X」が大きく書かれたDVD-Rパッケージの一部です。『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編』では,団子と,掲示物の写真です。それより前の告示に基づく,小学校学習指導要領解説算数編には,このような写真や,「実際例」に対してかけ算の式に表すなどの活動は見当たりません。
 もっと古い,かけ算の単元での事例調査の試みは,以下の文献より見ることができます。「日常生活へのひろがりが興味・関心を高める「かけ算をさがせ」」と「写真8 生活の中で見つけた九九」(いずれもp.149)です。

 2024年12月の当ブログへの投稿は,(1年前に設置した「ご案内」を除き)この記事のみです。複数の情報を照合しながら,それぞれが書かれた背景事情を認識し,これからの学びやネット活用に役立てることを,2020年代後半にも行っていきたいと考えています。