書店で,教科教育ではなく特別支援教育の棚に,「算数障害」を書名に含む本が2冊ありました。どちらも今年の発行です。購入し,通し読みをしました。
「かけ算の順序」に関する記述は,九九のところで見つけることができました。『教室の中の算数障害』p.143では「第七にかけ算は順番を入れ替えても同じ答えであることを学習し8×3は3×8で答えを出せます。」,『算数障害がわかる本』p.71では「覚えるのは、半分だけでいい」「1の段をのぞけば36個の式を覚えればいいことを伝えると、意欲がわきやすい」の記載があります。文章題で,あるかけ算の式が正解,かけられる数とかける数を入れ替えた式は間違い,という事例は,どちらの本にも見当たりませんでした。
読み比べると,『算数障害がわかる本』のほうが低学年寄りに見えました。わり算に関する障害や支援が具体化されたものは見かけず,2位数どうしのかけ算の筆算がp.47およびpp.72-73に出現します。『教室の中の算数障害』も,わり算の解説が極端に多いわけではありませんが,pp.168-171では「内包量」に焦点を当て,整数・小数の乗除の式や,「2本の数直線(ダブルナンバーライン)」(p.169),「×2」「×?」「÷?」(p.171)の表記を見ることができます。またp.155には文字式も出現します。
『教室の中の算数障害』のp.183は(その次のページからは参考文献・引用文献であり),本書の結語となっています。一部略して,書き出しておきます。
本末転倒にならないように子どもの成長を支援する
(略)方略は手段であってゴールではありません。
ただ、「子ども一人一人の多様なやり方を認める」ことが、非効率的なやり方をそのままにするという放置になってもいけません。その子どもは支援があれば、自分に合った、より効率的な方略を運用できるのかもしれません。また、教科書に示されているやり方は非常に洗練された効率的な方略の例ですので、それを否定することも避けるべきです。
支援者は様々な方略について知見をもち、課題の目的を把握し、課題に必要な認知特性を理解し子どもの様子をよく観察して、子どもの認知特性を把握し、子どもに適した方略を子どもと学習していくことが大切なのです。子どもと一緒に「算数島の地図」を作っていきましょう。やがて宝の埋まっている場所に印をつけることができるはずです。

