かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

15÷3は何の段を使って求めればよいか

 図示したのは,以下の2枚の画像です。

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 その後ツイートをしながら,教科書(教育出版,令和2年度)を参照しました。

 等分除については次の流れで答えを求めるページがありました。なお,以下の図はツイートにはなく,本記事のために作成したものです。

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 教科書はp.57です。「いちごが24こあります。6人で同じ数ずつ分けると,1人分は何こになるでしょうか。」という文章題から始まり,式を書くための横長の角丸長方形があります。これより前に,除算記号やわり算の式の書き方を学んでいるので,ここで期待される式は「24÷6」です。
 ページ中段の左はいわゆるトランプ配りで,右に,式が並びます。「□×6=24」から始まって,次の順番です。

  • (箱の中に1)×6=6
  • (箱の中に2)×6=6
  • (箱の中に3)×6=角丸正方形
  • (箱の中に4)×6=角丸正方形

 図と式の並びの下には,24÷6=角丸正方形 で,「24÷6の答えは,□×6=24の□にあてはまる数です。」です。さらに,みなとさんという人の吹き出しで,「□×6=6×□だから,6のだんの九九が使えるね。」とあります。
 この問題解決(計算)においては,「□×6=24の□にあてはまる数として4を見つける」ことを行っていますが,「□×6=24の□にあてはまる数を求めるには,4のだんの九九が使える」のではないことが,見てとれます。
 ツイートのうちhttps://twitter.com/mantennosorani/status/1480912001606221827に対しても同様で,5×3(に該当する九九の表のマス)を想起して,15÷3=5を求めたのだと主張しても,□×3=15に当てはまるのは5だけで他にないことを確認するには他の段も見る必要があり(3×□=15であれば3の段だけでよい),またあまりのあるわり算になると,わる数の段を使わないとうまくいかない事例が生じます。
 ツイッターのやり取りから離れます。教育出版の教科書は包含除先行です。「ビー玉が24こあります。1人に6こずつ分けると,何人に分けられるでしょうか。」という文章題がp.54の上部に,「24÷6の答えは,6×□=24の□にあてはまる数です。」と,かえでさんという人の吹き出しで「24÷6の答えは,6のだんの九九で見つけられるね。」が,同じページの下部にあります。包含除に基づくおはじきの操作と計算の方法---参照する九九は6の段のみ---を学んでから,等分除にも適用すると,九九は1の段,2の段,...と走査することになります。能率的に求めるには(交換法則も取り入れて),わる数の段を使えばよいと結論づけています。
 関連する見解を,当ブログとメインブログから抜き出します。

ここでなぜ,包含除のほうが分かりやすいのか,そして「被乗数先唱」が出てくるのかを,ミカンの問題を使って確認します.「15個のミカンを5個ずつ配ります。何人の子どもに配れますか」(包含除)に対して,わり算を知らない(または除法を乗法と関連づける活動として)状況で表したかけ算の式,5×□=15から,□を求めるのは九九の五の段が使えます.すなわち「五一が5,五二10,五三15」として,□は3となります.一方,「15個のミカンを5人に同じ数ずつ配ります。1人は何個になりますか」(等分除)に対する式,□×5=15から,□を求めるのは,何の段を使えばいいか分からない分,手間がかかるというわけです.(略)

わり算,包含除・等分除,トランプ配り (2016.05) - わさっきhb

 28÷8を求める際に,九九の中から,因数として8を持ち,かつ積が28以下となる,かけ算の式を,8の段以外で探すとなった場合には,3の段の「3×8=24」だけでは不十分であり,その前後の段を見て,それらが不適であることを確認する必要があります。2の段の「2×8=16」では,あまり(28−16=12)がわる数以上となり,4の段の「4×8=32」では,割られる数の28を超えてしまうのを,把握することが,「探索」のプロセスに含まれます。
 このように考えると,「28÷8は,何のだんの九九を使ってもとめればよいですか。」と問いを立てたとき,その答えとして「3のだん」は,許容できるように思えません。
 それに対し,8の段に着目すると,8×2=16や8×4=32は8の段に含まれています。他の数で考えてみても,除数の段を用いる方略は,「九九1回適用の除法計算」で「あまりなし」「あまりあり」のいずれにも利用可能なのが分かります。

あまりのあるわり算で,九九のどの段を使えば能率的に求めることができるか