- 齋田雅彦: 教え方のコツがわかる! “なぜ"に答える 小学校6年分の算数, ナツメ社 (2017).
教え方のコツがわかる! “なぜ"に答える 小学校6年分の算数
- 作者: 齋田雅彦
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2017/11/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本の内容ですが,「3+2×4は、どうして20にならないの?」の項目(pp.36-38)に違和感を覚えました。この質問への答え(理由)については,p.36に赤字で,「かけ算やわり算の方が、たし算やひき算よりも強いので、先に計算しないといけない」とあり,42ページでは,「バラ売りの桃を3個と、2個パックの桃を4パック」を使って,3+2×4=5×4=20と計算することのおかしさを解説しています。これらは納得できます。
違和感というのはp.37です。最初の段落を書き出します。
「5+4」とは、より正しく言うと、+5と+4のことを示しています。そして、+5と+4につながりはありません。同じように、「5-4」は、正しくは+5と-4のことを示しています。つまり、+5と-4につながりはありません。それぞれを入れ替えると、こうなります。
+5+4 +5-4 +4+5 -4+5
原文では,本文中,入れ替えを行う式のいずれも,「+5」は緑で,「-4」は赤で,丸囲みされています。すぐ下には,男の子らしき顔の絵と,「中学生になってから習う項という考え方です。」と発言する,吹き出しがついています。
中学以降に学んだことと,合いません。正負の数を意識するなら,「5+4」は「(+5)+(+4)」と書きます。この「(+5)」や「(+4)」が,項です。
そして,5と4の前につけた+記号は,符号なのに対して,真ん中の+は,加法(たし算)を表す記号です。プログラミング*1ではそれぞれ,単項演算子・2項演算子として区別されます。
このように表記することで,負の数を含めた交換法則により,(+5)+(+4)=(+4)+(+5)が成立します。交換して計算を行うまでの流れは,5+4=(+5)+(+4)=(+4)+(+5)=4+5=9と表せます。
ひき算は,5-4=(+5)+(-4)=(-4)+(+5)=-4+5=1となります。最後の-4+5=1については,計算ではなく,例えば「数直線で-4のところから正の向きに5だけ進むと1に着く」ことにより求められます。
かけ算とわり算からなる式についても同様です。同書のp.38では,12÷3÷4について「+12÷3÷4=+12÷4÷3」という式変形を行っていますが,かけ算(そして逆数と,乗法の単位元である1)を用いて,12÷3÷4=1×12××と表すことにします。
そうすると,乗法の交換法則より1×12××=1×12××が成立し,この右辺は12÷4÷3のことです。1××12×や1×××12といった式も得られ,それぞれ1÷3×12÷4,1÷4÷3÷12に対応づけられます。
上記で「1×」が出現するのは,+5は「プラス5」という数を表すことにも,「5を加える」というオペレータとしても使用できるのに対し,「×12」はオペレータ(12をかける,または,12倍する)に限定されるためです。+数または-数を,常にオペレータと見なすなら,加法の単位元0を入れて,0+(+5)+(+4)や0+(-4)+(+5)と書くことにすれば,統一的に扱えます。
「「0」も3の倍数に入るって本当?」(pp.49-50)のところで「「0」も、立派な3の倍数なんです。」「なるほど~。「0」も3の倍数に入るんだね。」と吹き出しにした直後,p.51では6と8の公倍数を求めるにあたり,6の倍数と8の倍数を小さい数から書き出すとなると,0が出現しないのには,しばらく唖然としました。ゼロ除算に関する,「正しくは、次のようになります。」(p.220)の2番目の式として書かれた,「5÷0=∞(無限大)」(同)のところもです。
*1:同書のp.221は「ちなみに、コンピュータプログラミングの世界でも、「0 Devide」(0でわるという意味)は、プログラムが異常終了してしまうので禁止されています。」で締めくくられています。えっと,「禁止」ではなく,ランタイムエラーとするなど,いまのプログラミング環境ではそれなりに対処がなされています。