かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

お皿の数を基にして1つ分のまとまりをつくり出すと

 第2章は見開きで100個,指導技術が書かれています。開始はp.22,100番目の右ページはp.221で,本当に100個です。
 目次より,2年のかけ算のを対象とした項目を,番号,見出し(学年と単元),開始ページの順で,書き出しておきます。

  • 012 机間指導中の言葉かけで多様な考えを引き出す(2年「かけ算(2)」) p.44
  • 039 友だちの発言の意味を問う(2年「かけ算(2)」) p.98
  • 050 子どもが板書する過程を見せない(2年「かけ算(2)」)p.120
  • 074 算数アルバムをつくる②―日常編(2年「かけ算(1)」)p.168

 以下では「012 机間指導中の言葉かけで多様な考えを引き出す」に焦点を当てます。「かけ算の式で表しましょう。」という問題文の下に,以下のような図があります(p.45;もとの図はモノクロで,本記事の作成にあたり着色と,丸の位置変更を行っています。皿を表す楕円が,縦方向に揃っていないのは,もとの図も同じです)。

 話を進める前に,小丸の総数(12個)を求めるための,本書に掲載されていない式を検討しておきます。かけ算ではなくたし算で表すと,2+3+1+4+2+0=12です。「何個が乗った皿が何皿ある」という方針で考えると,「4個が乗った皿が1皿」「3個が乗った皿が1皿」「2個が乗った皿が2皿」「1個が乗った皿が1皿」「0個が乗った皿が1皿」ですので,4×1+3×1+2×2+1×1+0×1=4+3+4+1+0=12と表せますが,0を含むかけ算を習うのは3年ですし,乗除先行は4年です。
 2年のかけ算となると,小丸を移動して「どの皿にも同じ数ずつ」にすることが期待されます。図にすると,こうです。

 「どの皿にも2個ずつ」になりました。1つ分の数は2,いくつ分は6ですので,2×6=12,答え12こ,というわけです。
 とはいえ,それでおしまいとはいきません。見出しの「多様な考えを引き出す」に対応するよう,p.45中央では「T えっ,こんなにたくさん式に表せるの!?」と教師が言い,子どもたちの活動を促します。
 4行,「C」から始まる子どもの発言のあと,以下の文章でページを締めくくっています。

 この問題では,お皿の数を基にして1つ分のだんごのまとまりをつくり出すと,2×6,3×4,4×3,6×2の4通りの式に表せます。はじめは2×6の式に表して満足していた子どもも,机間指導中の教師の言葉をきっかけに,自力で残りの3つの式に表すことができました。

 4通りの式の2番目以降を,図にしてみました。

  • 3×4

  • 4×3

  • 6×2

 このように操作したとき,「どの皿にも同じ数ずつ」という考え方(または指示の与え方)では不十分で,カラの皿は無視します。1個以上,●が乗っているお皿にのみ着目して,「どの皿にも同じ数ずつ」ある状態にし,かけ算の式に表すというわけです。
 「12×1」「1×12」「4×1=4,3×1=3,2×2=4,1×1=1,4+3+4+1=12」も認めるべきかどうかは,子どもと先生とのやりとり次第*1,と読んで感じました。

 本記事の図はPowerPointで作成しました。小丸をコピーしやすくするよう,次の2枚もスライドにしていました。カーブを描く矢印には「円弧」を使用し,始点と終点は1つ1つ調整しました。

*1:「1×12」と「12×1」を,「児童から出された式」とする,指導の様子が,https://tosanken.main.jp/data/R03/R3_%E9%83%BD%E7%AE%97%E7%A0%94%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E7%A0%94%E7%A9%B6%E7%B4%80%E8%A6%81.pdf#page=15より読めます。