かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

500-(x×80)は間違い

 2019/2/5の日付で,「平成30年度 算数学力実態調査のご協力依頼について」のPDFファイルと,「平成30年度 数と計算・数量関係 実態調査集計用紙」のExcelファイルが,ダウンロードできるようになっていました。
 このサイトには定期的にアクセスしていますが,「算数学力実態調査のご協力依頼について」として,詳細な実施方法が記された文書を,関係者以外が読めるようにしたのは,今回が初めてではないかと思います。本文中の「誤答傾向を中心に分析考察をしたいと考えておりますので、お手数ですが、誤答例をできるだけお書きください。」には,ちょっとびっくりしました。
 問題文は公開されていませんが,集計用紙の正答や解答例の欄と,これまで公開されている問題とを照合することで,どこはそのままで,何が追加・変更されたかを,うかがい知ることができます。
 「ご協力依頼について」には,「「数と計算」と「数量関係」、「量と測定」と「図形」の調査を2年サイクルで実施しております。本年度は「数と計算」と「数量関係」領域の問題を作成しました」とあるので,前回は平成28年度実施となるのですが,都算研 データ室TOPを見ると,「H28年度」はダウンロードできません*1。そこで,「H26年度」の内容(http://tosanken.main.jp/data/jittaityousa-kousatu/h26-new-gakuryokujittaityousa/h26jittaityousa-all_merged.pdf)と比較してみました。
 Excelファイルの「6年」のワークシート,大問2にまず注目しました。(1)は分数の除法,(2)は分数の乗法です.解答例などの列を見ると,解答類型は「正答」「数値線図がかけないが立式できる。」「数値線図がかけているが立式できができない。*2」「数直線図がかけていない。式がかけていない」「上記以外の誤答・無答」の5つに分かれています。
 それに対し,H26年度の対応する出題では,「(1)\frac34mの鉄のぼうの重さは4kgでした。この鉄のぼう1mの重さは何kgですか。」「(2)1mの重さが4kgの鉄のぼうがあります。この鉄のぼう\frac34mの重さは何kgですか。」で,式を立てるだけです。
 平成28年度からの変更か,今回からかは分かりませんが,「数値線図をかく」というのが出題に加わったと,読み取ることができます。
 第6学年の大問数は,今回実施分では7,H26年度は6です。今回,大問4に「順列や組み合わせについて、落ちや重なりのないように調べることができる。」をねらいとする出題が入っていました。2つの小問からなり,式は不要で,答えとなる数が書かれていれば正解です。
 今回の大問7と,H26年度の大問6のあいだで,文章は少し変更され,解答形式が異なっています。H26年度のほうから,(1)の文を書き出すと,「1個80円のチョコレートをx個買って、500円を出したら、おつりが20円でした。」です。H26年度では,4つの式の中から1つ選び,"丸う"の「500-80\times x=20」が正解です。
 それに対し,今回実施分では,式を書かせています。正答欄には,「500-80\times x」と「500-(80\times x)」が画像で貼り付けられています(画像にしているのは,Excelの文字では\timesxの区別が容易でないためと思われます)。「=20」がないので,式にするのは「1個80円のチョコレートをx個買って,500円を出したときのおつり」となります。
 解答類型は「正答」「500-(x\times 80)」「80\times x-500」「上記以外の誤答・無答」の4つです。「500-(x\times 80)」を誤答扱いとしていることに,驚きを覚えました。
 ただ,これを解答類型の1つとしても,そう解答する(80とxをひっくり返してかける)という割合は,1%もないのではないかと思われます。この問題で,他にありそうな解答として,「500-80x」(中学1年なら正解となる式です)と,「500-80\times」が考えられますが,今回の採点ルールではどちらも「上記以外の誤答・無答」となります。
 都算研の学力実態調査で,高学年の問題の採点でもかけ算の順序が考慮されているのは,この問題が初めてではなく,今回も(以前も)第6学年の大問2の(2)(問題文は前述のとおり)について,\frac34\times 4は誤答になっているのでした。
 他の学年もいくつか変更されていますが,第2学年の2つの問題を取り上げておきます。大問3は,(1)では問題に合う図を選び,(2)では式を書くもので,今回の(1)の正解は"丸う"です。3つ(またはそれ以上)の図があることを意味し,H26年度の2択とは異なるのが分かります。また大問5(L字型のアレイ)のExcelファイルでは,「3×10」「5×6」「6×5」「2×15」は正解とする一方,「1×30,30×1は、乗法の式になっているが数えていると考えられるので、正答としない。」という指示があります。これまで,そういった答えが事務局にフィードバックされてきたからと想像できます。


 (同月25日追記)2019/2/21の日付で,「平成30年度 算数学力実態調査 集計用紙の訂正版について」のPDFファイルと,「平成30年度 【訂正版】数と計算・数量関係 実態調査集計用紙」のExcelファイルが,ダウンロードできるようになっていました。
 第6学年のみです。大問2の(1)および(2)について,それぞれ数直線を選んだ上で,式を答えてもらいます。解答例(解答類型)には「数直線図が選べないが立式ができる。」とあり,訂正前の「数値線図がかけないが立式できる。」と対比すると,図をかかせる問題をH28年度に実施したけれど,(各実施校で)採点に時間がかかりすぎたため,今回は図を用意して選ばせる形式にしたのではないかと推測できます。
 それから本質的でない変更ですが,大問7の「500-80×x」などの文字式が,画像ではなく文字列になっていました。「x」の文字だけ,Times New Romanのイタリックです。

*1:http://tosanken.main.jp/data/H29/kenkyuhappyo_niji.pdfには「平成28年度学力実態調査の結果と考察 ~数と計算・数量関係~」が研究発表に入っているので,実施はされています。

*2:原文ママ。「数値線図がかけているが立式ができていない。」と思われます。(1)のみで(2)にはありません。