かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

問い方


 昨夜ツイートした内容をもとに,修正や追加を入れながら,割合に限定することなく,算数の外在的評価*1における出題形式について検討していきます。
 「クラス全体で30人います。このうち、6人が宿題をやってきませんでした。クラス全体の人数に対する、宿題をやってこなかった人数の割合は?」と問うのであれば,0.2も2割も20%も,\frac{1}{5}\frac{6}{30}も,正解になるのではないかと思いました。
 もし百分率で答えさせるのであれば,「...割合は何%ですか。」,歩合なら「...割合は何割ですか。」,そして百分率でも歩合でもない答え方を要求するなら,「宿題をやってこなかった人数は,クラス全体の人数の何倍ですか。」と問うべきでしょう。
 なお百分率も歩合も,(解説のつかない)小学校学習指導要領の算数に入っています。第5学年です。詳細は,次期解説のhttps://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_004.pdf#page=272以降で整理されています。読み進めると,「Bの□倍がA」という表記も見られます。

 といった個人的な思案を離れ,割合の問い方の実例を,全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)より調べてみました。今回,基点としたのは調査問題・調査結果:文部科学省です。平成19年度から30年度まで,年度ごとにリンクが設けられ,国立教育政策研究所のサイトに移動します。リンクのURLについて,平成26年度まではhttps(暗号化あり),平成27年度以降はhttp(暗号化なし)から始まりますが,平成30年度について,http://www.nier.go.jp/18chousa/18chousa.htmのほかhttps://www.nier.go.jp/18chousa/18chousa.htmにもアクセスが可能で,ざっと見た限り同一コンテンツです.
 平成21年度(2009年度)算数A 大問7は以下の通りです。
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 平成30年度(2018年度)算数A 大問8は以下の通りです。
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 平成21年度の問い方は「女子の人数の割合は,集まった小学生の人数の何%ですか。」なのに対し,平成30年度では「小学生の人数は,集まった子どもたちの人数の何%ですか。」となっており,問題文から「割合」が欠落しています。ですが基準量(200人),比較量(80人),そして4つの選択肢が同一であり,正解を得るためにすることは同じと言えます。
 なお(平成30年度の算数の)解説資料では「割合」のラベルをつけ、求め方の説明にも何度か,この語が使用されています。
 「何%ですか。」とする問題を探すと、平成20年度(2008年度)算数A 大問9(1)にありました。「「科学」の本の冊数の割合は,全体の何%ですか。答えを書きましょう。」と出題しています。円グラフから値を読みとって「20」だけを書くのが正解で,「%」は,解答用紙に印字されています。
 答えが一意に定まらないときに,カッコ書きで求め方を指示しているものもあります。いずれも計算問題です。平成22年度(2010年度)算数A 大問1(5)および平成25年度(2013年度)算数A 大問1(4)では,「6÷5」に「(わりきれるまで計算して,商を小数で書きましょう。)」を添えています。「1.2」が正解で,「1\frac{1}{5}」や「1あまり1」は間違いとなります。平成26年度(2014年度)算数A 大問1(4)では「2÷5」に対して同様の指示を与えています。
 それに対し,平成29年度(2017年度)算数A 大問2(4)では,「5÷9」の後ろに「(商を分数で表しましょう。)」を付けています。「\frac{5}{9}」が正解で,「0.555...」は不正解となります。
 国学力テストの算数Aでは,正解が1つになるようにしているのかというと,反例となるものを2つ,把握しています。一つは平成22年度(2010年度)の「8mの重さが4kgの棒があります。この棒の1mの重さは何kgですか。求める式と答えを書きましょう。」で,式は「4÷8」(「8÷4」は不正解),答えは「0.5」(kgは解答用紙に印字)とし,実際その解答が54.1%を占めたのですが,答えに\frac{4}{8}も正答となっています。分析結果*2では,式が「4÷8」で答えが「\frac{4}{8}と解答しているもの(大きさの等しい分数を含む)」のものを,解答類型の一つにしていて,反応率(そのように解答した割合)は0.0(%)でした。
 もう一つは,正解となる式を複数,想定していたケースで,平成24年度(2012年度)算数A 大問8で,「犬を飼っている人は8人です。この8人は,学級全体の人数の25%にあたります。学級全体の人数は何人ですか。求める式と答を書きましょう」が円グラフとともに示されています。式が「8÷0.25」,答えが「32」というのは,37.9%です。また答えは同じで,式を「8×4」としているのは,20.7%となっています。いずれにも,表の右端の列に「◎」がついており,これは,「正答については,設問の趣旨に即して解答として求める条件を定め,その条件を全て満たしているもの」を意味します。
 2つの事例については,当ブログおよびメインブログで記事にしていました。

 また別の問題意識にシフトします。多人数が解答するテスト(外在的評価)では,百分率を答えさせる問題には「%」,何kgかなら「kg」を,解答用紙に印字しておき,解答する側は単位は書かないようになっているのか,を考えることにします。
 全国学力テストのA問題では,ざっと見た限り,該当するように思います。
 他のテストに,反例がありました。東京都算数教育研究会の学力実態調査です。
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 平成29年度(2017年度)実施分の第2学年で,調査人数(解答者数)は57,955人です。大問2は,1Lますの目盛りを正しく読むことができるかをみる問題で,「3dL」または「300mL」が正答,「3L」や「3mL」は誤答となっています*3
 同じテストの大問5(2)では「でかけてから かえってくるまでに かかった時間は どれだけでしょう。」と問い,正解は「30分間または30分」が手書きです。前問では「時」「分」が印字されているのと対照的です。「4時10分」または「4時間10分」といった誤答は,この実施年度では8%を占めています。


 https://twitter.com/sekibunnteisuu/status/1100176533581230080を読んで,データマイニング関連で商品分析の手法(ABC分析、アソシエーション分析) | データ分析基礎知識というページを思い出しました。シュートのうまさとは異なる算定方法とはいえ,「確率」とは実のところ「割合」です。そして数の多さを考慮する指標として,Support(支持度)が紹介されています。

*1:この用語は,梶田叡一『教育評価』[isbn:9784641112773]によります。https://takehikom.hateblo.jp/entry/20150102/1420163349と合わせてどうぞ。

*2:https://www.nier.go.jp/10chousakekkahoukoku/02shou/shou_4s.pdf

*3:「0.3L」は,評価基準及び割合の表には見当たりません。