かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

かけ算の「意味づけ」について(2023.12)

かけ算(乗法)の「意味」と別に,「意味づけ」という表記をよく目にするので,ここで整理します。その特徴は,以下のように表すことができます。

  • かけ算という「演算」に対する「意味づけ」を示しています。
  • 学習者(子どもたち)ではなく,教師が認識しておくべき「意味づけ」です。
  • かけ算の意味には複数あることを念頭に置き(各著者が列挙し),単元指導または小学校算数(中学数学以降も)を見通しながら,「この意味を採用する」を意図して,「意味づけ」を使用しています。

 上記に関連する記述を含む情報源を3つ挙げ,抜粋を示します。

(p.45)
 第2学年では,乗法は,一つ分の大きさがaのもののb個分の大きさ,あるいはb倍に当たる大きさを求める計算として意味付けられることや,素朴にはaをb個だけ加えること(同数累加)によって,その大きさを求めることができることを指導する。

(p.239)
 第4学年までに,整数の乗法は,「一つ分の大きさが決まっているときに,その幾つ分かに当たる大きさを求める」場合や,「何倍かに当たる大きさを求める」場合などに用いるといった意味付けがなされてきた。

(p.50)
 かけ算は,昭和11年の「尋常小學算術」(緑表紙教科書)では,倍をすることとして導入されていたが,昭和26年の「小学校学習指導要領算数科編(試案)」においては,倍の代わりであるとするとともに,同じ大きさのグループがいくつかあるときの全体の個数の求め方,および累加を手ぎわよく計算する方法として述べられており,戦後まもなくより,上述のような意味づけがなされてきたことになる.

(p.126)
 子供が初めてかけ算を学ぶのは第2学年である。一般的には加法をもとにした同数累加で意味づけられ,(一つ分)×(いくつ分)=(全体)と言葉の式でまとめられる。例えば,4×3は4+4+4のように「4の3つ分」と解釈し,「4×3」という式になる。以降,第5学年になるまで整数倍の学習が続き,かけ算の意味は基本的には変わらない。

(p.127)
 本時では,同数累加の意味づけだけでなく,倍の意味づけも同時に引き出し適用させることが望ましい。子供はこれまでに,(一つ分)×(いくつ分)=(全体)と一緒に,(量)×(倍)の意味づけについても学習してきている。また第5学年では比例の学習を通しての倍を用いている。
 例えば,右のような問題に対して,「80×3」になる理由として,「80が3つ分」と「80円の3倍」の2つの意味づけが出されるようにしておくことが大切である。そして,「3m」を小数に変えたときに,整数倍だけにしか適用できない意味と整数倍と小数倍のどちらにも適用できる意味があることを捉えさせる。
(略)
 倍の意味づけを引き出すために,右のような比例数直線を活用する。(略)
 本時の最後には,整数にも小数にも適用できる倍の意味づけで,2年のかけ算場面も説明することを促す。こうして,子供は自分が理解していたかけ算の意味を,より一般化された意味として捉え直すことができる。

 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説算数編(p.239)と,『算数教材研究 四則計算』の,上記抜粋は,「乗法の意味の拡張」に関連する事項です*1