かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

日本科学教育学会第47回年会の,課題研究発表

⑩小学校下学年における児童の比例的推論の進展を促す算数科の学習指導
オーガナイザー:加藤久恵(兵庫教育大学
概要:比例的推論は割合や比例等の困難性を有する学習内容に関連しており,小学校上学年を対象とした理論的・実践的研究が多い傾向にある.これまでに発表者らは,小学校下学年における実態調査や授業実践から,比例的推論にかかわる学習軌道や,関連する概念的側面について探究してきた.それらを踏まえて本課題研究では,小学校下学年におけるさらなる調査や授業等をもとに,比例的推論の進展につながる算数科の学習指導について議論する.
<登壇者>
日野圭子(宇都宮大学
田島達也(熊谷市立成田星宮小学校)
市川啓(宮城教育大学
成澤結香里(山形大学附属小学校)
加藤久恵(兵庫教育大学
山下裕己(兵庫教育大学大学院生)
松島充(香川大学
新井美津江(立正大学

 この年会の文献のPDF版が,J-STAGEにて,日本科学教育学会の会員・非会員によらず無料でダウンロードできるようになっていました。登壇者による文献の書誌情報とリンク先は以下の通りです。

  • 日野圭子, 田島達也, 上野友美, 櫻井昭洋: 小学校第2学年児童の比例的推論の実際: 端数(半分)の処理におけるユニット化・ノルム化に着目して, 日本科学教育学会第47回年会論文集, pp.33-36 (2023). https://doi.org/10.14935/jssep.47.0_33
  • 市川啓, 成澤結香里, 高橋丈夫, 工藤優: 小学校1年生の児童のunit化の進展を促す学習活動の開発と進展の様相, 日本科学教育学会第47回年会論文集, pp.37-40 (2023). https://doi.org/10.14935/jssep.47.0_37
  • 加藤久恵, 山下裕己, 山本紀代, 寺井あい, 重松敬一, 指熊衛: 比例的推論の進展を目指した算数科の授業づくり―小学校第3学年「乗法」の学習におけるユニット化に着目して―, 日本科学教育学会第47回年会論文集, pp.41-44 (2023). https://doi.org/10.14935/jssep.47.0_41
  • 松島充: 比例的推論の基礎の形成に関わる活動―身体化認知の視点から見た小学校低学年の音楽科と生活科―, 日本科学教育学会第47回年会論文集, pp.45-48 (2023). https://doi.org/10.14935/jssep.47.0_45
  • 新井美津江: 乗法導入時の子どもの量概念と指導における教師の困惑, 日本科学教育学会第47回年会論文集, pp.49-52 (2023). https://doi.org/10.14935/jssep.47.0_49

 2年前にもリストアップを行っていました.

 ダウンロードして読んだ中で,引っかかりを感じたのは,最後の新井の文献です.具体的には,「高学年でも乗数と被乗数が逆になる子どもがいること」(p.50),「ここがきちんと理解できないと,単位量あたりとか5,6年生で乗数と被乗数が逆になる間違いはここから始まるのだと改めて感じました」(p.51)のところです.後者が先(p.51左カラムに書かれている教師Kの発言)で,そこから前者の記載になったように見えます.
 引っかかりというのは,「5,6年生」で起こりがちな間違いは,「乗数と被乗数が逆になる」ことではなく,「かけ算・わり算などの演算決定が適切にできない」ことにあるのではないか,ということです.