かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

東京都算数教育研究会の令和5年度実態調査第2学年について

 「令和5年度実態調査 各学年の結果と考察」の下に,学年ごとに分かれて,結果と考察のPDFファイルがダウンロードできるようになっています。R5 2学年結果と考察.pdfを閲覧しました。
 かけ算の問題は,大問4から大問6までです。大問4は九九の範囲のかけ算3題,大問5は基準量が後に示された問題*1,大問6はL字型アレイです。
 大問5について,解答類型の表を見ると,「※令和 5年度」となっていて,「この年度より問題の一部を変更して実施している問題」とのことです。前の調査(令和3年度)は,旧サイトのホームページの2022/10/31,■「令和3年度都算研新実態調査の結果と考察(2年)を掲載しました。」より見ることができ,比較してみました。
 小問(1)より前の文章について,令和3年度には「ふくろに 入れて」ががあるのに対し,令和5年度の問題には,なくなっています。正解の式について,令和3年度は「4×3=12」,令和5年度は「4×3または4+4+4」です。
 「問題の一部を変更して実施」とするには,無理があるように思います。
 解答類型の下の解説文について,正答・誤答のパーセンテージを除き,ほぼ同じ記述です。「順序」「順番」の文字はなく(ただし「(1)を正答しているにもかかわらず3×4と立式したり」は順序を含むものと解釈できますが),かわりに頻出するのは「乗法の意味」で,4つの段落で構成される大問5の解説文の各段落に1つずつ,ぜんぶで4回,出現します。
 大問5の出題形式は,今後もこのまま(隔年の都算研の)実態調査で実施して,長期にわたって正答・誤答の割合を見ることができればと思います。と言えれば良かったのですが,実施校で正誤を集計して都算研に送付するというのであれば,式は「4+4+4」でもよいか(または「A2」として模範解答ではない正答と扱うか)は検討の余地があるかもしれません。
 かけ算の順序ではないのですが,大問6の出題形式が変わっていました。総数を求めるおはじき(○)の並びは,令和3年度・令和5年度で変わりませんが,令和3年度(まで)は,求め方を2つ,書かせていたのに対し,令和5年度では(1)(2)の小問に分かれ,「図の もとめ方に 合う しき」を丸あ~丸えより1つずつ選ぶ形式になっています。結果として,令和5年度には2問完答が10ポイント減少し,1問正解の率が18ポイント向上していて,2問とも不正解は8ポイント減です。小問ごとに正答率を分けて掲載していませんが,より大きなアレイを考えてから,実際にはない部分を取り除くという(2)のほうが,低かったのではないかと推測します。
 丸あ~丸えの各式を見ると,丸えを除き,かけ算の式が「横×縦」になっているのも,少し気になります。掲載内容で,おはじきが何になるのかが読み取りにくいようにも思います。
 大問6について,(i)設問で,小さな丸がおはじきであるのを示すこと,(ii)各選択肢のかけ算の式は縦×横にすること,(iii)小問ごとに正答・誤答の状況を集計すること,を課題に挙げることができます。令和7年度の実態調査に,期待したいと思います。

*1:この語句でGoogle検索を行うと,令和の学習指導案を上位に見つけることができました。