かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

40を分解したら,4と0?

 東京都算数教育研究会の実態調査で出題された,「数の相対的な大きさ」の派生問題を紹介します。

 平成30年度実施の第3学年,大問3です。上記PDFでは,正解も書き込まれていますが,正解は取り除いて,問題文を抜き出します。

次の□にあてはまる数を書きましょう。
(1) 10000は、100が□こ 集まった数です。
(2) 12×40=12×4×□
(3) 3は、0.1が□こ 集まった数です。

 あてはまる数は,順に,100,10,30です。(1)は「数の相対的な大きさ」で,「いくつ分」が1位数でないので少し注意を要します。同ページの「評価基準及び割合」の表によると,正答は71%,「1000」という誤答は12%,「10」は9%,それ以外の誤答や無答は8%となっています。
 先に(3)を見ておきます。「小数の表し方」に関する出題で,例えば「1は,0.1が10個。3はその3倍だから,0.1が30個」と考えると正解に至ります。正答率は(1)(2)よりも高く,84%でした。
 本記事を書く動機となったのは,(2)です。大人モードで考えると,40=4×10を,左辺に適用(代入,置換)するだけと言えます。より正確には12×40=12×(4×10)ですが,乗法の結合法則を学んでいれば,カッコを取り除いて12×40=12×4×10と表せます。
 12×40=12×4×10を,等式ではなく,左辺から右辺への式変形と解釈すると,「12×40」を筆算または暗算で求める場合に,「12×4」を求めてから10倍すればよいことにもなります。
 この問題の正答率は75%です。(1)と(3)の間です。むしろ驚いたのは,「0」という誤答が,9%もあるということです。
 ここの実態調査は,問題用紙と解答用紙が分かれておらず,問題用紙の□などの中に解答を記入して,回収されるものとなっています。本問で「0」と誤答したとき,「12×40=12×4×0」という式になっているわけです。確かめとして,左辺・右辺を別個に計算すると,12×40=480なのに対し,12×4×0は……0です。合っていません。
 PDFでは出題の次のページに,出題意図や指導に当たっての注意などが書かれていますが,「40を,分解したら,4と0」ではないことは,強調されていてもよかったように感じました。
 ただし,「40を,分解したら,4と0ではない」のは,12×40を置き換える(2つの因数の積を3つの因数の積にする*1)など,式の計算を考えるときに考慮すべき話です。十進位取り記数法のもとで,4と0を順に並べた数を「四十」と対応づけることは,1年生の学習となります。
 関連する話が中学数学にもあります。10の位がaで1の位がbという数を,aとbを使った式で表すとき,期待されるのは「10a+b」です。これを「ab」と書くと,a×bを意味します。手書きで2つの□を横並びにして,左に「a」,右に「b」を入れ,「10の位がaで1の位がbという数」を表すのは,いいけれども,それは「考え方」であって,「式」ではないのです。

*1:国学力テストにも出題が見られます。https://takexikom.hatenadiary.jp/entry/2019/07/10/065114