かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

6×6

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 問題文は「6はこあります。チーズは ぜんぶで なんこになるでしょうか。」です。
 丸1つは「1はこ」で,その中の1つ分(「チーズ」と書かれた個包装)が,「1こ」です。「1つの箱に,チーズが6個あること」は絵から知る*1のに対し,総数を求めるにあたり「6箱」あるという情報は,絵ではなく問題文から獲得することになります。
 以下の本のpp.84-85に書かれた授業(実践事例)です。

こうすればできる!算数科はじめての問題解決の授業―100の授業プランとアイディア

こうすればできる!算数科はじめての問題解決の授業―100の授業プランとアイディア

  • 作者: 早勢裕明,算数科「問題解決の授業」の日常化を考える会
  • 出版社/メーカー: 教育出版
  • 発売日: 2017/04
  • メディア: 単行本
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 巻末の引用・参考文献には,東洋館出版社や明治図書の本が多く,算数指導の実践としては比較的ページ数の多い本を,教育出版から出すのはどういうことかなと思いながら,教科書の著作者に当たると,教育出版「小学算数」の著作者に,早勢氏の名前がありました。
 冒頭の問題を,詳しく見ていきます。「かけ算九九づくり」と題する,2年の授業です。2から5までの段は学習済みで,「6の段の九九をつくりましょう」という学習になっています。
 式としては,6個ずつ6箱あるので,6×6とすればいいでしょう。2つの6を反対にしても,6×6であり,言ってみれば,かけられる「数」とかける「数」の区別のしようがありません。
 なのですが,p.58の解説文には,「本時の答えを求める式「6×6」のかけられる数とかける数の意味にも注目させ,同じ6でも意味が違うことを確認します。」と書かれています。
 その解釈では,「6×6」の左側の6が,かけられる数です。「1つの箱に,チーズが6個あること」に対応し,今回の授業では値が固定されます。一方,右側の6は,かける数であり,チーズの箱の数です。6の段の九九をつくるにあたり,1から9まで変わっていくほう,と言うこともできます。
 もとの問題文を「5はこ」に替えて最初に提示し,「式は5×6かな? 6×5かな?」と先生が問いかけながら,子どもたちの意見を得て,6×5であることをクラス全体で同意するという流れも,考えられます。ですが「6はこ」にすることで,(かけ算の)式は1つだけとし,そこで迷わせることはしないかわりに,「6×6」の2つの「6」の意味の違いを通じて,「1つ分の数×いくつ分」は,6の段の九九の構成においても基礎になることを,復習できるという意義があるわけなのですね。
 計算して(6の段の九九を学んでいない段階で)6×6=36を求めるにあたり,①アレイ図,②同数累加,③乗数と積の関係,を挙げていますが,③は,この段階で子どもたちの答え方に出てくるのは不自然で,先取り学習の可能性を危惧します。