かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

分速3kmで5時間移動したら何km進むか

最近はTweetDeckで,#掛算を含むツイートを眺めるようにしているのですが,その中で,2人のやりとりにこのハッシュタグがあるのを見かけ,ツイートをたどってみました.
発端は以下のものです.

ここに振込伝票を入れたリプライが入って,2人でやりとりしていきます.IDは差し控えますが,発端のツイートをした人のほうが一貫しており分かりやすい内容となっています.
以下のやりとりにも,なるほどの思いがあります.
1:

2:

もうひとかたのツイートに出現する「(60分×5)分」は,高木*1に出現せず,構文的にも不適切だろうなと思います.「5時間は何分か」を,かけ算の式で表してみると,例えば,60×5=300ですが,ここに単位をつけるなら「60分×5=300分」です.
これを「(60分×5)分」と表記するのは,「カナコさんは3本のえんぴつをもっています。サワコさんから2本もらいました。タダコさんから1本もらいました。ぜんぶでなん本あるでしょう」という文章題に対し「3+2=5本+1=6本」と書く,というのと同様の性急さを覚えました.
ともあれ,「分速3kmで5時間移動したら何km進むか」を,被乗数と乗数に注意してかけ算の式に表すと,次のようになります.

  • 1分間の移動距離は3km
  • 1時間(60分)の移動距離は,3kmの60倍,すなわち3km×60
  • 5時間の移動距離は,その5倍,すなわち(3km×60)×5

ここから結合法則を用いて,(3km×60)×5=3km×(60×5),としたいところですが,高木では名数を含む式に対しての適用は,想定されていません.とはいえ,「分速3kmで5時間移動したら何km進むか」に対して次のように考えることは可能です.

  • 5時間は1分間の何倍か,というと,60×5〔=180倍〕
  • 1分間の移動距離が3kmなら,5時間の移動距離は,3km×(60×5)

ここで「60×5」の式に単位をつけていないのは,3kmに対して乗数として作用することを念頭に置いているからです*2.今の算数でも考慮されており,啓林館のサイトでは乗法的オペレータの中で例示しています.
高木貞治が書いたころ,パー書きの量(の算術への適用)をうかがい知ることはできませんが,「分速3kmで5時間移動したら何km進むか」に対してパー書きを含む式にするなら,「3km/分×(60分/時間×5時間)」はどうでしょうか.

*1:例えば,http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1087461/16.「掛ケ算(乗法)」は,コマ番号16から始まります.

*2:「5時間は何分か」に限れば,5×60=300で求めても差し支えないのですが,3km×(5×60)と書き,ここに結合法則を適用して(3km×5)×60と書いてみると,もとの問題の状況において「3km×5」に適切な意味づけをすることができない,という問題点も浮かび上がってきます.