かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

4マス関係表で29g,4.2g,15.5g

 後半のpp.18-19(PDFビューアで見ると2番目のページ)の右上に,「4マス関係表がわかりやすいね」と題した図解があります。画像を取り出しました。
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 1番目は,「1mの重さが5.8gのはり金があります。このはり金5mの重さは何gですか。」で,答えは「29g」です。2番目は,「6mの重さが25.2gのはり金があります。このはり金1mの重さは何gですか。」で,答えは「4.2g」です。いずれも,異論ありません。
 3番目は,「1mの重さが3gのはり金があります。このはり金を何mか切り取って重さをはかると46.5gありました。何m切り取りましたか。」で,答えは,ことばの式でも,倍を使って考えても,「15.5g」となっていますが,「15.5m」のはずです。
 この3問は,割合の3用法(乗法と除法の相互関係)に対応づけられます。1番目は第2用法(乗法),2番目は第3用法(等分除),3番目は第1用法(包含除)です.
 第2用法(乗法)では被乗数と積が同種の量になり,第3用法(等分除)も被除数と商が同種の量になります。しかし第1用法(包含除)では,被除数と除数が同種の量で,商はそれらと異なる量です。
 「異なる量」については,次のように考えます。次元を意識すると,3番目の問題で46.5÷3=15.5あるいは46.5g÷3g=15.5で得られる商は,無次元量です。しかし,重さと長さの絵,そして4マス関係表では,「□m」と,長さに関する値となっています。このとき,「1mの重さが3gのはり金を,□m切り取ったときの重さ」と,「3gの□倍」とを同一視すればいいのです*1。ある乗法構造において,乗数が無次元量になることは,Vergnaud (1983)を取り上げながらかけ算と構造 - わさっきhbで紹介しています。今回の問題ではわり算なので,無次元量の値を得てから,実際の場面のもとで解釈し,「答え 15.5m」として差し支えはありません。
 「4マス関係表がわかりやすいね」の出題数が3つなのは,3用法を1問ずつ提示しているから*2と思って読み進めると,「29g」「4.2g」「15.5g」という答えの並びは,おかしいなと気づくことができた次第です。
 解説資料後半のPDFの次のページ(p.21)に,かけ算の導入に関して,「被乗数と乗数の順序」を目にしました。「そろえて書くと,わかりやすくなるね。」に,賛同します*3
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*1:次元を因数の一つとみなして形式的に処理をするなら,3g:46.5g=1m:□mより□=□m÷1m=46.5g÷3gと書くこともできます。

*2:小学校学習指導要領の算数で「乗数や除数が整数である場合の小数の乗法及び除法の計算ができること。」と書かれている,4年で学習するかけ算・わり算に,「3用法」を取り入れる場合,包含除の確かめには注意が必要となります。今回の3番目の問題では,「3×□=46.5」より「46.5÷3=15.5」としていますが,3×15.5が46.5と等しいことを,計算して確かめるのは,4年では未習なのです。交換法則を適用して,3×15.5=15.5×3としたいところですが,これも5年での学習となります。1番目(第2用法・乗法)と3番目(第3用法・等分除)については,「乗数や除数が整数である場合の小数の乗法及び除法の計算」のもとで,確かめができます。

*3:1つの升目に,「18」という2桁の数を書くのには,少し抵抗感もありますが,「18」「8」「18」「20」の「ぜんぶの数」について,そろえて書くのを重視するとなると,これでもいいのかなと思います。「3×6=18」と「6×3=18」の式があり,次期解説の「(略)対置によって,被乗数と乗数の順序に関する約束が必要であることやそのよさを児童に気付かせたい」を反映させたものとなっているのも興味深いところです。