ABCDEの2文字並び方の場合は、5を1つ分と見なすのは、難しいとしても、不可能ではありません。次のようなグループ化のルールを作ったらどうでしょうか。各グループでは1番目の文字として、A, B, C, D, Eをそれぞれ1回ずつ使います。
— kistenkasten723 (@flute23432) September 2, 2019
このツイートより前,https://twitter.com/flute23432/status/1168399984082833408において,「A~Eの5人から2人が並ぶ方法はいく通り?」という問題に対し,小学校の算数の考え方だと,「構成員数が4のグループが5つ」できて,式が4×5となります。ですが上記から始まる4つのツイートにより,「構成員数が5のグループが4つ」できること,したがって5×4という式に表せることを示しています。
興味深かったので,図にしてみました。
ツイートに合わせて,A-B-C-D-E-A-B-C-Dと鎖状に並べました。2回目のE,および3回目以降については,そこを行き先とすることがないため,図に入れていません。
この関係は,巡回群で表せそうです*1。wikipedia:1の冪根の表記を用いて,,としたとき,AからEまでは*2から(=1)までに対応づけられます。そして,ABという並びは,という順序対*3に,他の例としてCEだったら,に,対応することになります。
別のアプローチを紹介します。「1つ分の数×いくつ分」を(表面上は)用いずに,また(場合の数の)積の法則や,直積も,根拠とせずに,小学校算数の範囲で,区別される5人に対し2人を並べる方法としては,以下の表がよいかもしれません。*4
最初の文字はAからEまで,そして次の文字もAからEまで,という2文字を並べると,AA,AB,AC,...,EEの25通り*5ができます。しかしAA,BB,CC,DD,EEは「2人を並べる」に反するので取り除きます。ということで答えは25-5=20通りとなります。
一般化して,n人において2人を並べる場合の数も,同じように表にすることで,通りとなり,nの括り方次第で,n(n-1)も,(n-1)nも(n=5のときは,5×4も,4×5も),式として認められます。
集合で表してみます。S={A,B,C,D,E}とおいたとき,長さ2の順列は{xy|x,y∈S}-{xx|x∈S}と表せます。長さ3の順列(区別される5人から3人を並べる)について,集合としては,{xyz|x,y,z∈S}-{xxz|x,z∈S}-{xyx|x,y∈S}-{xyy|x,y∈S}となるのですが,この要素数を求める際には,差演算における{xxx|x∈S}の重複回数に注意すると,|{xyz|x,y,z∈S}|-|{xxz|x,z∈S}|-|{xyx|x,y∈S}|-|{xyy|x,y∈S}|+2|{xxx|x∈S}|となり*6,=n(n-1)(n-2)を得ます。4人を並べる場合の求め方,および冒頭のツイート(鎖状表現)に基づき3人を並べるような図示と立式は,断念しました。
順列のかけ算については,メインブログの以下の記事でも,ある算数の教科書で期待される「4×3×2×1」の式がどうしてそうなるのか,検討していました。
ただ,記事中の以下の表は,不十分に思えました。
作り直すと,次のようになります。
「何番目まで」と「何通り」の関係は,比例ではないわけで,この特性もまた,順列や組み合わせが,「1つ分の数×いくつ分」と相容れないことを,示唆するものとなります。
(最終更新:2020-02-22 朝)
*1:「n人から2人を選ぶ組み合わせ」は,正n角形の辺および対角線として,図示できること,そして「n人から2人が並ぶ方法」(順列)に関しては,それぞれの辺と対角線に向きを持たせればよいことを,活用しています。
*2:これはと等しくなります。上付き数字はべき乗を表します。
*3:ではありません。=であり,この左辺は,「AとAの1つ先」,右辺は「AとB」を表します。
*4:表にして,「同じものどうし」は斜線を引く,というのは,現行および次期の『小学校学習指導要領算数編』でも,http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/16/1234931_004_2.pdf#page=152とhttp://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_004.pdf#page=319より,見ることができます。
*5:目で見て数えれば「25通り」なのですが,「5×5=25」と計算するのであれば,「1つ分の数×いくつ分」が暗黙のうちに使用されることとなります。
*6:この式のそれぞれの|...|は,重複順列の総数となります。元になる集合はS(本記事で書いた例では|S|=n=5)で,ちょうど1個を選ぶ場合も重複順列と見なすことにします。