かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

板書本における順列・組み合わせの扱いについて

 小学6年の「場合の数」について,今月出版された2冊の「板書本」の内容を紹介します。

 先に算数における順列・組み合わせの扱いについてをご覧ください。「順列の総数が{}_4P_4で表される場面」のことを「{}_4P_4の場面」と表記し,左右の4は他の数値に,中央のP(順列)はC(組み合わせ)に変わり得ることも,本記事で使用しています。
 概況としては,まず,今回の2冊でも,{}_4P_4に対応する(黒板に書かれる)かけ算の式は「6×4=24」でした。{}_4C_2の場面を扱った授業では,かけ算の式は見当たりませんでした。先日の記事との違いとしては,{}_nP_k(ただしn>k)の場面や,求めるのが金額などの(「~通り」ではない)問題を挙げることができます。

板書&イラストでよくわかる 365日の全授業 小学校算数 6年下

 紙版のみです。Kindle版はなく,https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-490611-2にも「電子書籍版: 未販売」となっています。
 「並べ方と組み合わせ方」が,pp.100-119にあります。単元の指導計画は,全8時間です。
 第1時は「鬼ヶ島に鬼退治へ! 並び方は?」と題した授業で,桃太郎を先頭として,イヌとサルの並び順は,{}_2P_2の場面で2通り,桃太郎・イヌ・サルの並び方は{}_3P_3の場面で6通りですが,いずれも列挙によります。
 第2時は「キジも入ると何通りかな」で,{}_4P_4の場面です。3つのものの並び方は列挙で6通りなのを,左に板書したあと,4つにした場合には,「桃太郎が先頭に並ぶ並びは6通り」と「イヌ、サル、キジが先頭になる場合も同じように6通りずつあるので、」のあとに,「6×4=24」「全部で24通り」です。黒板の右には,「0、1、2、3の4つの数字を並べて4桁の整数をつくろう。」という適用題です。「0は千の位にはならない」が,吹き出しで添えられています。
 第3時は「凧をつくろう」です。長方形の上下に色を塗るのですが,「上に赤,下に青」と「上に青,下に赤」は区別されます。黒板の左では,4色からなので{}_4P_2の場面,中央と右は5色からなので{}_5P_2の場面と言えます。それぞれ,列挙により「12通り」「20通り」と求めています。ただし黒板の外の解説(p.106)には,{}_4P_2の場面に関して「4×3という計算で答えを出す子どももいます。このときの4は何を表していて,3はどれに当たるのかを必ず確認し,答えを形式的に出すことだけにならないようにさせます。」という文章があります。
 第4時は{}_4C_2の場面で,さまざまな図が黒板に見られますが,答えとなる組み合わせの数も,かけ算の式も見当たりません。第5時は,{}_4C_3{}_5C_4の場面です。列挙のあと,「選ばなかった色に目をつけた」により,{}_4C_3の場面を{}_4C_1の場面に変換し,「4色できる」としています。
 第6時以降は,順列・組み合わせにとらわれない応用問題です。第6時と第7時は最短経路問題で,第7時は簡単な巡回セールスマン問題と言えます。第8時は共通集合を考慮した問題です。ベン図や,共通部分を考慮したテープ図が使用されています。

板書で見る全単元・全時間の授業のすべて 算数 小学校6年下

 Kindle版を購入して読みました。
 「場合の数」はpp.52-63で,5時間扱いです。
 第1時は「リレーの順番を考えよう」で,いきなり{}_4P_4の場面です。子どもたちに1人1つずつ言ってもらうのでは,重複が出ます。「1番目をAに決める」ことで,列挙により「6通り」を得て,1番目がB・C・Dの場合についても列挙したあとに,「6×4=24 24通り」を書いています。
 第2時は「旗の色のならび方を考えよう」で,黒板の左と中央は{}_4P_3の場面です。「24通りより少ないかな」という吹き出しもありますが,樹形図を用いると,第1時と同じ場合の数になることが分かり,「Aが左のとき6通り」「6×4=24」「24通り」としています。黒板の右は,{}_5P_3の場面で,Aが左の場合の樹形図で12通りになるのを用いて,「12×5=60」と書いています。
 第3時は,0,1,1,2,3,4のカードから3枚選んで3桁の数を作るもので,0が百の位に使えないことを入れながら,列挙により何通りあるかを求めています。
 第4時は「全部で試合は何試合?」で,{}_3C_2{}_4C_2{}_5C_2の場面です。図や表を用いて「3試合」「6試合」「10試合」を得ています。かけ算の式はなく,{}_4C_2の場面では「3+2+1=6」,{}_5C_2の場面では「4+3+2+1=10」という,たし算の式があります。
 第5時は「選んでできる金額はいくらかな?」で,{}_4C_3の場面と言えます(実際に求めるのは「何通りか」ではなく「金額の組み合わせ」です)。
 さらに読んでいくと,「場合の数」以外の単元にも,関連する授業がありました。「6年のまとめ」はp.86以降で25時間扱いです。この中の第18時は「電話線は何本?」で,{}_nC_2(n=1,2,...,6)の場面です。第21時は「平均はいくつ?」で,{}_4C_2の場面に基づいています。第25時は「分け方は何通りあるのかな?」で,{}_5C_2の場面です。
 「数学へのかけ橋」はp.138以降で13時間扱いです。第1時(長方形が1種類しかできない数(素数)),第2時(2㎠の正方形の1辺の長さは?)に,場合の数の考え方が含まれていました。

順列・組み合わせ以外から

 2冊の本で,同じ内容を扱っている授業がありました。
 『板書&イラストでよくわかる 365日の全授業 小学校算数 6年下』では,「仲よし分数を見つけよう」(pp.140-141)として,積と差が等しくなるような分数の組を探す活動があります。黒板に書かれている式には,\displaystyle\frac15\times\frac16\displaystyle\frac15-\frac16\displaystyle\frac25\times\frac27\displaystyle\frac25-\frac27があります。
 『板書で見る全単元・全時間の授業のすべて 算数 小学校6年下』では,「分数神経衰弱をしよう」(pp.98-99)です。こちらにも,\displaystyle\frac15-\frac16\displaystyle\frac15\times\frac16の式があります。そのほか,「分母の差が1で分子が1のとき」に\displaystyle\frac1a-\frac1b\displaystyle\frac{b-a}{a\times b}\displaystyle\frac1{a\times b}となるという,文字を使った式の計算も,板書されていました。