かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

理由の総合

(意見)「6人のこどもに,1人4こずつみかんをあたえたい.みかんはいくつあればよいでしょうか」という文章題に対し,式に「6×4=24」を書くと不正解になる事例が報告されている.
 しかし乗法は交換法則を満たすので,どの順序で書いても不正解にすべきでない.小学校2年生の算数教科書では,「1つぶんの数×いくつ分=ぜんぶの数」として,かけ算の導入がなされるというが,1つぶんの数を決めつけるのはよくない.かけ算の式の順序では,文章題の意味を理解しているかを判別できない.
 これを不正解とすることは,多面的にものを見る力や論理的に考える力を育てることに悪影響を及ぼす.以上より,かけ算の順序は不要である.

「ただ、機械的に、単なる数値と数値とを掛けるだけなら交換法則が成り立ち、掛け算の順序はどうでもいいが、具体的な状況や単位のつく数量を式に表す場合はそうはいかない。まず、掛け算の本当の意味である、「1つ分の数がいくつあるか」ということをよく考えれば、それは、〈1つ分〉×〈いくつ〉の順序に従って式を書くことになる。逆の順序「〈いくつ〉× 〈1つ分〉」で式を書いたら、「1つ分の数がいくつあるか」と考えてなどいないことになるし、それは、いうならば、文章をきちんと読まずに、あるいは読めもせずに、ただ、出鱈目に、出てきた数を掛け合わせただけである、もしくは、そう思われても仕方がない」
 これは、過去に見聞した掛け算順序固定強制指導を擁護する言論を、思い出のなかから抜粋して整理して、私の言葉で、まとめてみたものです。

 上記の2つの引用は,互いに異なる主張となっています。各著者が,相手方の意見を整理し,著者の見解としては,その内容に否定的です。
 ただしこれまでの「かけ算の順序」論争と異なる,新しい共通点があるようも見えます。さまざまな理由を組み合わせて,一つの「意見」「言論」にするという行為です。
 その逆の操作は,雑多な意見・言論から,根拠を分析して細分化するというものです。理由の分類で紹介しています。
 分析の反対は総合です。ということで上の2つの引用内容は,「理由の総合」がなされた事例と言えます。
 賛成か反対か,分析か総合か,この組み合わせで2×2の4通りを考えることができます。箇条書きにします。

  • 賛成の立場で理由を分析
  • 賛成の立場で理由を総合
  • 反対の立場で理由を分析
  • 反対の立場で理由を総合

 ここで,「賛成」「反対」は,「かけ算の順序」に対する賛否ではなく,それに基づく主張(擁護論・否定論)に対する賛否です。賛成・反対の言葉を使う代わりに,「(分析・総合した人が)かけ算の順序に肯定的か否定的か」を考えると,場合分けは2×2×2で8通りになります。ただ「かけ算の順序」の使われ方や,その肯定・否定の状況は,「(主張の)賛否」「分析か総合か」と比べて,かなり幅があるように見えます。
 言葉遊びに陥ることなく,書かれた情報と,自分が書いた情報とを見比べ,新たな知見を得ることを,引き続き行いたいと考えています。
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