かけ算の順序の昔話

算数教育について気楽に書いていきます。

理由の分類

 「かけ算の順序」の理由を整理したツイートを,目にすることがあります。今月も1件,ありました。
 ツイートに限定することなく,新しいものから順に,見つけたものを挙げていきます.

2019年10月

 ツイート内の画像をテキスト化しました。ただし複数行で1つの項目となっている箇所を,1行にしているので,表示は一部異なります。

掛け算に順序があるというのは
├数学的に真だよ派(被害者群)
│├かけられる数の単位になるよ派(単位理論)
│├学校でそう習ったでしょ派(小卒派)
│├社会でも順序が固定されてるよ派(レシート理論)
│└文章題では重要だよ派(文章題理論)
└数学的には偽だよ派(現実路線)
 ├小児の理解を促すのに都合がいいよ派
 │├とりあえず出てきた数を掛けとけという生徒を検出できるよ派(穏健現場主義)
 │├掛け算の構造を教えるのが大事だよ派(構造派)
 ││├構造を理解していない人を見つけられるよ派(現場主義)
 ││├正しい順序で式を書ける人の方が正しく理解している、何故なら彼らは正しい順序で式を書けるよ派(循環派)
 ││└構造を教えた方が良いと実証されているよ派(まぼろし派)
 │├両方OKと教えると子供は混乱するよ派(混乱理論)
 │├算数は数学と違って○○だよ派(算数理論)
 ││├国語も教えられるよ派(一石二鳥理論)
 ││├授業を聞いているかも採点基準だよ派
 ││├全人的教育だよ派
 ││ etc.
 │├このようなことは検証することではないよ派(崩壊派)
 │├現場に出たことがあれば有効だとわかるよ派(新現場主義)
 │├順序を教えてない外国より理解できてるよ派(比較論法)
 │├特に示されてはいないけれど有効と信じているよ派(願望派)
 │└理解に役立つし指導要領に書いてあるよ派(積極的指導要領派)
 └小児の理解を促すのにも特に都合がよくないよ派
  ├理解に役立たないけど指導要領に書いてあるから政治的圧力で教えざるを得ないよ派(消極的指導要領派)
  ├答えが一意的で採点が楽になるよ派(マークシート理論)
  ├立式の制約で式変形はしてもいいから無害だよ派(無害理論)
  ├順序を守っていないものを全てバツにしたら普遍的に順序を守れと言っていると誤解されたよ派(救急車理論)
  ├掛け算の順序はサンタクロースみたいなもので大人になれば忘れるから結局無害だよ派(サンタクロース理論)
  ├例え小学校で掛け算の順序ありきで教えても、掛け算の順序が普遍的なルールだと誤解している大人なんているわけないよ派(被害者無視論法)
  ├そもそもバツにしてないよ派(和解派)
  │└ただしその児童と面接して真に理解していた場合はな!なお理解しているかどうかは正しい式が書けるかどうかで判定する 派(問い詰め派)
  ├学校には秩序が必要だよ派(俺の教室だ、俺がルールだ論法)
  └本当に賢い子供は空気を読んで正解になるように書くよ派(空気論法)

2017年8月

 こちらも,ツイート内の画像をテキスト化しました。

掛け算の順序問題のブレイクダウン(2017-08-23版)

掛け算の順序┬数学──┬交換則(割り算でも同じこと言えんの?)
      │    └定義(どっちでも本質同じじゃん)
      ├教育現場┬健全性(正しいことを誤答扱いするのはまずい)
      │    │├採点基準(正しければなんでも正解というのはむしろ極論)
      │    │└ガバナンス(先生の言う通りにしなさい!)
      │    └学校不信(役に立たないことばかり強制しやがって!)
      └言語学─┬諸語対比(英語では読み下し方が2種類あってさらに混乱)
           └改革案(「3かける5」でなく「3の5倍」と読んだら?)

2017年5月

 図を作り直しました。

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2010年11月?

●3. 掛け算の式の順序にこだわったダメな教え方の例

前節で私が述べたかったことを理解してもらい易いように、
私が問題有りとみなしている掛け算の教え方の例を以下に挙げておきます。

(1) 掛け算を「1つ分の数」×「いくつ分」の形式で導入し、
「6人のこどもに、1人4こずつみかんをあたえたい。
みかんはいくつあればよいでしょうか」という問題を出し、
「6×4=24」という回答にバツをつける。バツをつけた理由として、
24という答は正しくても式の立て方が間違っている、
掛け算は「1つ分の数」×「いくつ分」の順序で書く規則になっている、
などと説明する。

(2) 「6×4=24」と答えた子どもが、
一人あたり4個配るので「1つ分の数」は4であり、
6人いるので「いくつ分」は6である、
と教師が意図していたように正しく理解していたとしても、
掛け算は「1つ分の数」×「いくつ分」の順序で書くと教えたので、
「6×4=24」にはバツを付けなければいけない、などと主張する。

(3) 掛け算の可換性を認識している子どもに
「どっちの順番で書いても結果は同じでしょ」と言われたとき、
掛け算は「1つ分の数」×「いくつ分」の順序で書かなければいけない、
順序を変えると式の意味が変わってしまうので間違いになる、と指導する。

(4) 「6×4=24」と答えた子どもが、
トランプのように配れば「1つ分の数」は6で
「いくつ分」は4になると考えていたことを知った途端に、バツをマルに変えて、
よくできましたね、ごめんなさい、バツにしたのは間違いでした、
掛け算は「1つ分の数」×「いくつ分」の順序で書くという規則に
しっかりしたがっていたのですね、だから本当はマルでした、と説明する。
問題:上の(1)~(4)のような教え方が間違っている理由を述べよ。

解答例:

(1) 掛け算は「1つ分の数」×「いくつ分」の順序で書かなければいけないと
いう特殊ルールを強制しない限り、「6×4=24」にバツを付けることは不可
能です。しかし、算数教育の目標はそのような特殊ルールを強制することではあ
りません。普遍的に通用する算数の考え方を身に付けてもらうことが目標です。
だから特殊ルールにしたがわなかったという理由でバツを付けることは誤りです。
教師が示した特殊ルールににしたがわない子どもであっても正しい考え方をして
いる可能性があります。正しい考え方をしているのにバツをつけてしまうような
教え方は避けるべきです。

(2) 子どもが「1つ分の数」「いくつ分」の概念を正しく理解しているのだか
ら、その点を褒めてあげるべきです。子どもが成功したときに褒めてあげること
は教育の基本でしょう。自分が採用した特殊なルールにしたがわなかったという
理由でバツをつけるのはあまりにもひどすぎる。

(3) 子どもが掛け算の可換性を正しく認識していることを褒めてあげるべきです。
a×b という式は「1つ分の数」×「いくつ分」という意味を持つということは
単なる特殊ルールに過ぎません。子どもの数学的才能を無視して教師が示した特殊
なルールにしたがったかどうかでバツを付けてはいけません。

(4) 褒めるべき点は「トランプのように配る」という教師の意図とは別の正しい
考え方を示したことであり、掛け算の順序に関する特殊ルールにしたがったこと
ではありません。褒めるところを間違えると、子どもを間違った方向に誘導して
しまいます。

(最終更新:2019-11-07)